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覚海上人天狗になる事(谷崎潤一郎)のあらすじ・登場人物

天狗に生れると信じた上人

谷崎潤一郎 1931年(昭和6年)9月 「古東多万」

文字数
3,319字
読了目安
約7分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 和歌山県

この作品について

高野山に伝わる古文書をもとにした考証随筆。1931年(昭和6年)9月、雑誌「古東多万」に発表された。鎌倉時代に高野山第三十七世執行検校を務めた覚海上人は、死後に天狗として魔界に生れると信じて世を去ったという。谷崎は増福院に伝わる南勝房法語や覚海伝を自ら筆録し、上人が大師から告げられた前生の物語を引きながら、その信仰の由来をたどっていく。

あらすじ

「凡心ヲ転ズレバ業縛ノ依身即チ所依住ノ正報ノ淨土也」——この南勝房法語を残した坊さんが、鎌倉時代の高野山に生きた覚海上人である。私はその遺文を伝える増福院を訪ね、住職の好意で古文書をことごとく筆録した。紀伊続風土記によれば、天狗は鬼魅の類でありながら善天狗と悪天狗の別があり、必ずしも仏法の敵ではないという。上人はある時、自らの前生を示せと血涙を流して祈り、大師の示現を得た。摂津の南海に小蛤として生れ、千歳を波に漂い、熊野参詣の馬となった——そう告げられた上人は、自らの来世をも予知していたのである。

登場人物

冒頭部(原文より)

南勝房法語にいう、「南ガ云ハク十界ニ於テ執心ナキガ故ニ九界ノ間ニアソビアルクホドニ念々ノ改変ニ依テ依身ヲ受クル也、サヤウニナリヌレバ十界住不住自在也」と。此の南勝房という坊さんが覚海上人のことであって、順徳院の建保五年に高野山第三十七世執行検校法橋上人位に擢んでられたというから、ざっと今から七百年前、鎌倉時代の実朝の頃の人である。

「覚海上人天狗になる事」谷崎潤一郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

上人の廟は山中の遍照ヶ岡にあるが、一説には華王院境内の池辺に葬ったとも云い、その他も現に増福院の庭中に存している。覚海伝の賛の終りに曰く、「遍照岡崛ノ枯枝落葉毫釐モ之ヲ採ルトキハ厳祟ヲ施ス、其ノ威其ノ霊信ズ可ク懼ル可シ、其ノ悉地ヲ成ズル上カ中カ下カ、都ベテ即身ノ佛カ、嗚呼奇ナル哉遊戯三昧」と。

「覚海上人天狗になる事」谷崎潤一郎(青空文庫)

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