川端康成へ(太宰治)のあらすじ・登場人物
芥川賞への怒りを綴った公開状
- 文字数
- 2,077字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
太宰治が、第一回芥川賞の選考委員だった川端康成に宛てて書いた、有名な公開状。落選の理由に「作者目下の生活に厭な雲あり」と書いた川端に対し、太宰が激しい怒りと屈折した思いをぶつけた一文で、文学史に残る「芥川賞事件」の当事者の声である。
あらすじ
「あなたは文藝春秋九月号に私への悪口を書いて居られる」——太宰はそう切り出す。第一回芥川賞の選考で落選した太宰は、選考委員・川端康成の選評に激しく反応した。川端が「作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった」と書いたことに、太宰は「事実、私は憤怒に燃えた。幾夜も寝苦しい思いをした」と応じる。そして彼は、候補作「道化の華」がいかにして書かれたかを、盲腸炎と肺の病で生死をさまよった入院の日々とともに、切々と語る。「おたがいに下手な嘘はつかないことにしよう」。太宰は、川端の選評の裏に「世間」と「金銭関係」のせつなさを嗅ぎ取ったと言い、その装いきれなかった嘘を突く。芥川賞をめぐる若き太宰の怒りと矜持、そして屈折した甘えが噴き出した、文学史に残る公開状である。
冒頭部(原文より)
あなたは文藝春秋九月号に私への悪口を書いて居られる。「前略。――なるほど、道化の華の方が作者の生活や文学観を一杯に盛っているが、私見によれば、作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった。」 おたがいに下手な嘘はつかないことにしよう。私はあなたの文章を本屋の店頭で読み、たいへん不愉快であった。
「川端康成へ」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
ただ私は残念なのだ。川端康成の、さりげなさそうに装って、装い切れなかった嘘が、残念でならないのだ。こんな筈ではなかった。たしかに、こんな筈ではなかったのだ。あなたは、作家というものは「間抜け」の中で生きているものだということを、もっとはっきり意識してかからなければいけない。
「川端康成へ」太宰治(青空文庫)
名文
小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った。
第一回芥川賞の選評で「作者目下の生活に厭な雲ありて」と書かれた太宰が、選考委員の川端康成に宛てた抗議文。怒りをむき出しにした短い言葉に、受賞への執着と傷つきやすさがにじむ。
原文を読む
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