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川端康成へ(太宰治)のあらすじ・登場人物

芥川賞への怒りを綴った公開状

太宰治 1935年(昭和10年)10月 「文藝通信」

文字数
2,077字
読了目安
約4分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

太宰治が、第一回芥川賞の選考委員だった川端康成に宛てて書いた、有名な公開状。落選の理由に「作者目下の生活に厭な雲あり」と書いた川端に対し、太宰が激しい怒りと屈折した思いをぶつけた一文で、文学史に残る「芥川賞事件」の当事者の声である。

あらすじ

「あなたは文藝春秋九月号に私への悪口を書いて居られる」——太宰はそう切り出す。第一回芥川賞の選考で落選した太宰は、選考委員・川端康成の選評に激しく反応した。川端が「作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった」と書いたことに、太宰は「事実、私は憤怒に燃えた。幾夜も寝苦しい思いをした」と応じる。そして彼は、候補作「道化の華」がいかにして書かれたかを、盲腸炎と肺の病で生死をさまよった入院の日々とともに、切々と語る。「おたがいに下手な嘘はつかないことにしよう」。太宰は、川端の選評の裏に「世間」と「金銭関係」のせつなさを嗅ぎ取ったと言い、その装いきれなかった嘘を突く。芥川賞をめぐる若き太宰の怒りと矜持、そして屈折した甘えが噴き出した、文学史に残る公開状である。

冒頭部(原文より)

 あなたは文藝春秋九月号に私への悪口を書いて居られる。「前略。――なるほど、道化の華の方が作者の生活や文学観を一杯に盛っているが、私見によれば、作者目下の生活に厭な雲ありて、才能の素直に発せざる憾みあった。」  おたがいに下手な嘘はつかないことにしよう。私はあなたの文章を本屋の店頭で読み、たいへん不愉快であった。

「川端康成へ」太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 ただ私は残念なのだ。川端康成の、さりげなさそうに装って、装い切れなかった嘘が、残念でならないのだ。こんな筈ではなかった。たしかに、こんな筈ではなかったのだ。あなたは、作家というものは「間抜け」の中で生きているものだということを、もっとはっきり意識してかからなければいけない。

「川端康成へ」太宰治(青空文庫)

名文

小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った。

第一回芥川賞の選評で「作者目下の生活に厭な雲ありて」と書かれた太宰が、選考委員の川端康成に宛てた抗議文。怒りをむき出しにした短い言葉に、受賞への執着と傷つきやすさがにじむ。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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