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共産党宣言(マルクス)のあらすじ・登場人物

階級闘争の歴史を告げる檄文

  • 社会
  • 翻訳

マルクス 訳者 幸徳秋水 1904年(明治37年)11月 「平民新聞」

文字数
35,731字
読了目安
約1時間11分
表記
旧字旧仮名

この作品について

マルクスとエンゲルスが、労働者の秘密結社「共産主義者同盟」の綱領として起草し、1848年2月にロンドンでドイツ語の小冊子として出した文書。社会の歴史を階級闘争の歴史としてとらえ、ブルジョアとプロレタリアの対立がどこから生まれ、どこへ向かうかを論じる。日本では幸徳秋水と堺利彦が英訳から共訳し、1904年(明治37年)11月、週刊『平民新聞』の創刊一周年記念号に第三章を除いて載せたが、ただちに起訴され、関係者は罰金刑を受けた。ここに収めたのは、堺がのちにドイツ語の原文と照らし合わせて口語体に改めた新訳(1921年の序を付す)で、堺は亡き幸徳との連名を残している。冒頭の堺の序は、この訳が日本で公刊できなかった事情を自ら記しており、明治・大正の言論統制の記録としても読める。本文は、旧字旧仮名の歯切れのよい口語文。

あらすじ

「一個の怪物がヨーロッパを徘徊してゐる」と始まり、権力者たちが恐れる共産主義の見解と目的を、共産主義者自身が公然と示すときが来たと宣言する。第一章「ブルジョアとプロレタリヤ」は、これまでの社会の歴史を階級闘争の歴史と規定する。封建社会の中から生まれたブルジョアジーは、世界市場と大工業によって古い関係を打ち壊し、生産力を飛躍的に高めたが、その生産力はやがてブルジョア的な所有関係の枠に収まらなくなり、恐慌をくり返す。同時にブルジョアジーは、自らを倒す者として近代の賃金労働者プロレタリアを生み出し、大工業の中に集めて団結させる、と論じる。第二章「プロレタリヤと共産主義者」では、共産主義者の目的をプロレタリアの階級的結集、ブルジョア支配の転覆、政治権力の獲得に置き、私有財産・家族・国家・宗教などをめぐる非難に一つずつ反論する。そのうえで、土地所有の剥奪、累進所得税、相続権の廃止、信用と運輸の国家集中、児童の無料公教育など十か条の方策を挙げ、階級対立の消えた協同社会を展望する。第三章は、封建的社会主義、小ブルジョア社会主義、ドイツの「真正」社会主義、ブルジョア社会主義、サン・シモンやフーリエ、オーエンらの空想的社会主義を順に批判する。第四章は各国の反対諸党に対する共産党の立場を述べ、支配階級を共産主義革命の前に戦慄させよ、プロレタリアは鎖のほかに失うものを持たない、と結んで「萬國のプロレタリヤ團結せよ!」と呼びかける。

冒頭部(原文より)

 一個の怪物がヨーロッパを徘徊してゐる。すなはち共産主義の怪物である。古いヨーロッパのあらゆる權力は、この怪物を退治するために、神聖同盟を結んでゐる。ローマ法皇もツァールも、メッテルニヒもギゾウも、フランスの急進黨もドイツの探偵も。  見よ。在野の政黨で、在朝の政敵から、共産主義的だといつて誹毀されないものがあるか。また見よ、在野の政黨で、他の一そう急進的な反對諸黨派に對して、ならびにその保守的な政敵に對して、共産主義の燒印をつけた詰責を投げ返さないものがあるか。  この事實から二つのことがわかる。  共産主義はあらゆるヨーロッパの權力者から、既に一個の勢力として認識されてゐること。  共産主義者が全世界の面前にその見解、その目的、その傾向を公然と表示し、黨自身の宣言をもつて、共産主義の怪物のお伽噺と對抗すべき時機が熟してゐること。  この目的のために、諸國の共産主義者がロンドンに集まつて、次の宣言を起草した。そしてそれをイギリス語、フランス語、ドイツ語、イタリー語、フレミッシュ語、およびデンマーク語で公表することにした。

「共産党宣言」マルクス(青空文庫)

末尾部(原文より)

 要するに、共産黨は、到る處において、社會的および政治的の現状に反抗する各種の革命運動を擁護する。  すべてこれらの運動において、共産黨は常に財産問題を標榜してゐる。その財産問題の發達程度がどうであらうとも、彼らは常にそれを運動の根本としてゐる。  最後に、共産黨は到る處において、萬國の民主的諸黨派の團結と一致とのために努力する。  共産黨は、その主義政見を隱蔽することを恥とする。彼らは公然として宣言する。彼らの目的は、一切從來の社會組織を強力的に顛覆することによつてのみ達せられる。支配階級をして共産主義革命の前に戰慄せしめよ。プロレタリヤは、自分の鎖よりほかに失ふべき何ものももたない。そして彼らは、獲得すべき全世界をもつてゐる。  萬國のプロレタリヤ團結せよ!

「共産党宣言」マルクス(青空文庫)

名文

一個の怪物がヨーロッパを徘徊してゐる。すなはち共産主義の怪物である。

『共産党宣言』本文の書き出し。旧来の権力がこぞって恐れる「怪物」として共産主義を名乗り出る、挑発的で劇的な冒頭として知られる。

在來一切の社會の歴史は、階級鬪爭の歴史である

第一章の冒頭に置かれた一文。社会の歴史を支配する者とされる者の闘争として捉える、宣言全体の歴史観を一行で示す。

プロレタリヤは、自分の鎖よりほかに失ふべき何ものももたない。そして彼らは、獲得すべき全世界をもつてゐる。

宣言の結び。このあとに「萬國のプロレタリヤ團結せよ!」の呼びかけが続く。堺利彦・幸徳秋水訳の文語調が力強さを添える。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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