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閒花集(三好達治)のあらすじ・登場人物

梶井基次郎の墓前に捧げた小詩集

三好達治 1934年(昭和9年)

文字数
4,151字
読了目安
約8分
表記
旧字旧仮名

この作品について

三好達治の第3詩集。第2詩集『南窗集』のあと、小さな日常の風景や旅の印象を、短い行の抒情詩として集めた。自序にあたる献辞で、梶井基次郎の墓前に捧げると記され、信州上林の客舎で編まれたことが末尾に見える。「閒花」とは、野に咲く名もない花のこと。肩の力の抜けた小品が並ぶ。

あらすじ

冒頭に「この小詩集を梶井基次郎君の墓前に捧ぐ」とあり、「砂上」の海の詩で始まる。「海 海よ お前を私の思ひ出と呼ばう」と、波打ち際に臥して思い出と向き合う。続く「鶯」は、籠の中で歌う鶯の歌が美しくなるのは囚われているからだと、自らの歌のありようを重ねる。ほかに「漁家」「平津」「村」など、三田文学に載せた風景詩があり、旅先の見聞が短い行にまとめられている。巻末の後記で、三好は亡き友の過去の日が、千仞の谿間をのぞくように眼前に見えると記し、七月一日に信州上林の客舎でこの小詩集を編んだ、と記している。

冒頭部(原文より)

この小詩集を梶井基次郎君の墓前に捧ぐ 砂上 海 海よ お前を私の思ひ出と呼ばう 私の思ひ出よ お前の渚に 私は砂の上に臥よう 海 鹹からい水 ……水の音よ お前は遠くからやつてくる 私の思ひ出の縁飾り 波よ 鹹からい水の起き伏しよ

「閒花集」三好達治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 六月三十日、六蜂書房より梶井基次郎全集下卷を受取る。夜半「書簡」の處々を拾ひ讀みしてゐるうち、思はず心を動かし、卷を蓋ふて寢に就かうといく度か試みては、また机の前にかへつて飜讀する。さうして枕に就てからも、耿々としてもの思ひ、遂に眠をなさず天明にいたる。彼と私の交游は、僅かに數載を越えなかつたが、今また事にふれて、まことに思出は縷々として限りがない。ああ、疏慵にして才薄き私の如きものが、やうやく今日この處まで、たどたどしき道のりを歩み來つた過去を顧みるにつけても、彼の友誼により、その策勵に扶けられること甚だ少くなかつたのを忘れ得ない。この感慨は、何かしら私をして、底薄暗い千仞の谿間をのぞきこむやうな思ひをさせる。またそれらの過去の日は、的として冰霰のやうに、私の眼前にある。  七月一日、たまたまこの小詩集を編んで校を終つた。野草※花、摘んで以て彼が墓前に供ふと云爾。 信州上林の客舍に於て 三好達治

「閒花集」三好達治(青空文庫)

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