測量船拾遺(三好達治)のあらすじ・登場人物
測量船から洩れた初期の詩
- 文字数
- 17,651字
- 読了目安
- 約35分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
三好達治の第1詩集『測量船』に収められなかった詩を集めた補遺。1964年(昭和39年)3月の日付をもつ再刊本の後記が付く。祖母が蛍や月光をかき集めて手のひらからくれる「祖母」や、玻璃盤に漬けられた胎児を歌う「玻璃盤の胎児」など、『測量船』と同じころの清新な抒情が並ぶ。
あらすじ
巻頭の「玻璃盤の胎児」は、生まれないのに死んでしまった胎児が、アルコールのとばりのなかで昼もなお昏々と眠る様子を歌い、「昏々と睡る」の反復と、亜剌比亜数字の3の比喩で、胎児の姿を静かに浮かび上がらせる。「祖母」では、祖母が蛍や月光をかき集め、桃の実のように合わせた掌の中から沢山くれる。「短唱」は木の枝に卵が稔る様子を歌い、「魚」では、魚の腹が白いので光るという、魚のきらめきが短く歌われる。巻末には、三好による再刊本の後記があり、拾い集められた詩が反省の材料として眼の前に積まれたこと、残された余日を空しくしないための鞭にしたいことが述べられている。
冒頭部(原文より)
玻璃盤の胎児 生れないのに死んでしまつた 玻璃盤の胎児は 酒精のとばりの中に 昼もなほ昏々と睡る 昼もなほ昏々と睡る やるせない胎児の睡眠は 酒精の銀の夢に
「測量船拾遺」三好達治(青空文庫)
末尾部(原文より)
冬至書房の中島さんが私の『測量船』を再刊して下さるといふ。私としては素直にお言葉に従ふのが、この際自然であらうと思つた。また一つには、「測量船」の手さぐりの意味は、今ではもう死灰に帰した、無用々々とも考へた。友人石原八束さんは、同書当時、私の廃棄した旧稿をくさぐさ拾ひ集めて下さつた。これにはいささか驚きつつご好意に感謝し、また面映ゆい思ひが少くなかつた。再刊本の「拾遺」がそれである。とり集めていただいて、私には反省のしろが眼の前に堆く置かれた。就ては、といつて、唯今感想をのべる勇気はない。私にのこされた余日を、空しくしないための、鞭といたします。不尽。 昭和三十九年三月 三好達治
「測量船拾遺」三好達治(青空文庫)
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