山果集(三好達治)のあらすじ・登場人物
仔羊や蝶を歌う澄んだ小詩集
- 文字数
- 3,575字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 旧字旧仮名
この作品について
三好達治の詩集。詩誌「四季」に発表した短い詩を中心にまとめた。青い海辺の仔羊、雷のあとの蝶、砂丘に咲く南瓜の花など、澄んだ視覚的な比喩が重ねられている。三好の詩のなかでも明るい調子の巻である。
あらすじ
巻頭の「仔羊」は、海の青さに耳をたて、囲いの柵を跳び越える仔羊を、今朝生まれたばかりの自分の歌になぞらえる。続く「雷蝶」では、雷のあとの「かみなり蝶」が村へ来て、村長邸の裏庭の百合の花粉にまみれ、交番のある四辻で道に迷い、風に揚がって火の見櫓の半鐘よりも高く昇ってゆく。「黎明」は、砂上に咲いた南瓜の花を、消し忘れたランプに見立て、夜は貨物列車になってトンネルに隠れたという。ほかに「海辺」「唖蝉」「新月」などがあり、巻末の「新月」は、立ち枯れた赤松が啄木のアパートのようだと歌う。多くは数行から十数行の短い詩で、四季派の抒情の特徴が見える。
冒頭部(原文より)
仔羊 海の青さに耳をたて 圍ひの柵を跳び越える 仔羊 砂丘の上に馳けのぼり 己れの影にとび上る 仔羊よ 私の歌は 今朝生れたばかりの仔羊 潮の薫りに眼を瞬き 飛び去る雲の後を追ふ 雷蝶 雷の後 かみなり蝶が村へくる 村長邸の裏庭の 百合の花粉にまみれてくる
「山果集」三好達治(青空文庫)
末尾部(原文より)
雨の後 山は新緑の襟を正し 膝を交へて並んでゐる 峽の奧 杉の林に 發電所の燈がともる さうして後ろを顧れば 雲の切れ目に 鹿島鎗 新月 圓い小窗を穿たれた 立枯れの赤松の樹は この丘の 啄木のアパート はや三日月は傾いて 山山に 霧の濃淡
「山果集」三好達治(青空文庫)
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