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艸千里(三好達治)のあらすじ・登場人物

自分の詩を昨日の月と呼ぶ

三好達治 1939年(昭和14年)

文字数
6,828字
読了目安
約14分
表記
旧字旧仮名

この作品について

三好達治の詩集。旅人の目で風景を見つめる短詩と、散文詩風の作品とが並ぶ。『春の岬』(1939年)と同じ年に刊行された。冒頭の「枕上口占」は、自分の詩を昨日の月への餞けだと呼ぶ、詩人自身の詩観を示す。

あらすじ

巻頭の「枕上口占」では、自分の詩は「一つの着手であればいい」、家は「毀れやすい家でいい」と言い、詩は明け方の西の空にある昨日の月への餞けだと歌う。続いて収められた「蝉」は散文詩で、船の帆柱に取りつけられる滑車「セミ」の話から、働く者へと思いが広がる。「南の海」「涙」などは「新潮」「中央公論」に載せられた詩である。詩集の終わり近くには戦場の兵士を思わせる一節があり、泥に膝をついて憩いにつく者を思いながら、遠くに重砲の音、近くに流弾の声が聞こえる、と結ばれる。静かな旅の詩と戦時の緊張とが同居する一冊である。

冒頭部(原文より)

枕上口占 もとおのれがさえのつたなければぞ、集ならんとする夜半…… 私の詩は 一つの着手であればいい 私の家は 毀れやすい家でいい ひと日ひと日に失はれる ああこの旅の つれづれの

「艸千里」三好達治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 雨は聲もなく降りつづいてゐる、小止みもなく、雨は十日も降つてゐる。  やがて時が來るだらう、その傷ついた膝を、その虔ましい困憊しきつた兩膝を泥の上に跪づいて、さうして彼がその勞苦から彼自身をとり戻して、最後の憩ひに就く時が、やがて間もなく來るだらう。  遠くに重砲の音、近くに流彈の聲。

「艸千里」三好達治(青空文庫)

名文

しかはあれ 若き日のわれの希望と 二十年の月日と 友と われをおきていづちゆきけむ

三好達治『艸千里』(1939年)の表題作「艸千里濱」より。かつて訪れた阿蘇の草千里を二十年ぶりに眺め、山は変わらないのに、若き日の希望も友も去ったと嘆く。文語の調べが中年の哀感を格調高く歌う。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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