二十四の瞳(壺井栄)のあらすじ・登場人物

大石先生と十二人の教え子

作者
壺井栄
発表
1952年(昭和27年)2月
初出
ニューエイジ
種別
小説
ジャンル
  • 社会
  • 心理
舞台
  • 香川県
文字数
113,444字
読了目安
約3時間47分
表記
新字新仮名

この作品について

昭和三年、瀬戸内海の小さな岬の村の分教場に、若い女の先生・大石先生が赴任してきた。自転車に乗り洋服姿で現れた「おなご先生」と、彼女が受け持った十二人の一年生。ふれあいと成長のよろこびに満ちた日々は、やがて戦争の時代へとのみこまれてゆく。教師と教え子の心の絆を通して、戦争が奪ったものの大きさを静かに、深く訴えかける、壺井栄の不朽の名作である。

あらすじ

昭和三年四月、瀬戸内海べりの小さな岬の村の分教場に、若い女の先生が赴任してきた。町から自転車で通い、洋服を着た「おなご先生」こと大石先生は、旧弊な村人に奇異の目で見られながらも、受け持った十二人の一年生と明るく素直な心を通わせてゆく。ところがある日、大石先生は子どもたちのいたずらで足を痛め、遠い町の家へ帰って療養することになる。会いたさのあまり、幼い十二人が長い道のりを歩いて先生を訪ねてくる場面は、この物語のもっとも美しい一齣である。やがて先生は結婚して岬の村を離れるが、教え子たちとの縁は切れない。時は流れ、子どもたちは大きくなり、世の中は戦争へと傾いてゆく。貧しさゆえに奉公に出る娘、家業に縛られる子、そして兵隊にとられ、あるいは戦死し、あるいは目を失って帰ってくる少年たち――。かつての十二の瞳は、時代の荒波に一つずつ散らされてゆく。敗戦後、ふたたび同じ村の教壇に立った大石先生を囲んで、生き残った教え子たちが同窓会を開く。戦争で盲いた磯吉が、指で級友の顔をたどりながら一枚の記念写真を「見る」場面に、先生も教え子も涙する。教師と子どもたちの純粋な情愛を通して、平和の尊さと戦争の非情さとを静かに描き、映画化もされて広く愛された、壺井栄の代表作である。

登場人物

人物相関図

師範を出て母校へ。復職を口ききする産婆になる。何でもしゃべる歌に憑かれ家出。料理屋を継ぐただ一人苦労を知らずに過ぎる母を失い大阪へ。弁当箱を守る家が没落し売られ行方知れず六年でやめ、二十二歳で病死質屋の番頭を志し失明して帰る岬に残り山伐りと漁師中学から大学へ。戦死下士官を志し戦死落第しても明るく。戦死あんまの住みこみを世話するやまいしさなえ山石早苗無口で成績は組で一番かべこつる加部小ツル便利屋の娘。噂の出どころかがわますの香川マスノ料理屋の娘。歌の天才にしぐちみさこ西口ミサ子村の金持のひとり娘かわもとまつえ川本松江大工の娘。マッちゃんきのしたふじこ木下富士子傾いた旧家の娘かたぎりことえ片桐コトエ漁師の娘。五人の姉おおいしひさこ大石久子岬の分教場の女先生。小石先生・泣きみそ先生おかだいそきち岡田磯吉豆腐屋の子。ソンキとくだきちじ徳田吉次キッチンたけしたたけいち竹下竹一米屋の子。利発もりおかただし森岡正網元の息子。タンコあいざわにた相沢仁太声の大きなおせっかい
人物の関係を整理した相関図(アプリ収録の図をそのまま掲載しています)

章ごとの「厳選あらすじ」

アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。

  1. 一 この作品について
  2. 二 主要人物
  3. 三 主要なサブキャラクター
  4. 四 昭和三年四月四日──自転車の先生
  5. 五 落とし穴と、八キロの道
  6. 六 四年後──本校の五年生
  7. 七 『草の実』と、それぞれの進路
  8. 八 徴兵検査の日
  9. 九 戦争がとったもの
  10. 十 十八年ぶりの岬、そして歓迎会
  11. 十一 重要な設定と伏線

冒頭部(原文より)

 十年をひと昔というならば、この物語の発端は今からふた昔半もまえのことになる。世の中のできごとはといえば、選挙の規則があらたまって、普通選挙法というのが生まれ、二月にその第一回の選挙がおこなわれた、二か月後のことになる。昭和三年四月四日、農山漁村の名が全部あてはまるような、瀬戸内海べりの一寒村へ、若い女の先生が赴任してきた。

『二十四の瞳』壺井栄(青空文庫)

末尾部(原文より)

 あかるい声でいきをあわせている先生の頬を、涙の筋が走った。みんなしんとしたなかで、早苗はつと立ち上った。酔ったマスノはひとり手すりによりかかって歌っていた。 はるこうろうのはなのえん めぐるさかずきかげさして  じぶんの美声に聞きほれているかのようにマスノは目をつぶって歌った。それは、六年生のときの学芸会に、最後の番組として彼女が独唱し、それによって彼女の人気をあげた唱歌だった。早苗はいきなり、マスノの背にしがみついてむせび泣いた。

『二十四の瞳』壺井栄(青空文庫)

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