人間失格(太宰治)のあらすじ・登場人物
道化を演じた男の破滅の手記
- 作者
- 太宰治
- 発表
- 1948年(昭和23年)6月
- 初出
- 展望
- 種別
- 小説
- ジャンル
- 心理
- 社会
- 舞台
- 青森県
- 東京都
- 神奈川県
- 文字数
- 73,021字
- 読了目安
- 約2時間26分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
太宰治の代表作にして遺作となった中編小説。1948年(昭和23年)に発表され、脱稿の直後に太宰は玉川上水で入水自殺を遂げた。主人公・大庭葉蔵の三冊の手記を、作者を思わせる「私」が紹介するという構成をとる。人間の営みが理解できず、道化を演じることでしか他者と関われない男の破滅までの半生を描いた自伝的色彩の濃い作品で、青年期の魂の苦悩を赤裸々に綴った告白文学として、世代を超えて読者の共感を集め続けている。
あらすじ
東北の裕福な家に生まれた大庭葉蔵は、幼い頃から人間の生活というものが理解できず、他人の怒りや本心が恐ろしくてたまらなかった。彼はその恐怖を隠すため、わざと滑稽に振る舞う「道化」を処世術として身につける。上京後は画塾で知り合った堀木に酒と煙草、淫売婦と左翼運動を教えられ、次第に破滅的な生活へと傾いていく。カフェの女給と鎌倉の海で心中を図るが自分だけが生き残り、罪の意識を深める。その後、純真な少女ヨシ子と結婚して一時は穏やかな生活を送るものの、ヨシ子が汚される事件をきっかけに再び酒に溺れ、モルヒネ中毒に陥り、ついには脳病院に収容される。人間として生きる資格を失った——「人間失格」。手記はそう結ばれ、廃人同様となった葉蔵は兄に引き取られ、故郷の田舎で老女中とともにひっそりと暮らすのだった。
登場人物
- 大庭葉蔵 本作の主人公。人間を恐れ、道化を演じて生きる手記の書き手
- 堀木正雄 葉蔵に酒や遊びを教えた画学生。悪友
- ヨシ子 葉蔵を信じ切る純真な妻
- ヒラメ 葉蔵の監視役を務める骨董商
- ツネ子 葉蔵と鎌倉で心中を図ったカフェの女給
- スタンド・バーのマダム 葉蔵の手記を「私」に託す女性
人物相関図
章ごとの「厳選あらすじ」
アプリでは、この作品を次の章立てで詳しく読めます(全文はアプリ内)。
- 一 この作品について
- 二 主要人物
- 三 主要なサブキャラクター
- 四 はしがき──三葉の写真
- 五 第一の手記──道化という処世術
- 六 第二の手記──「ワザ」の露見と鎌倉の海
- 七 第三の手記(一)──女たちのもとを転々と
- 八 第三の手記(二)──ヨシ子の信頼が汚された夜
- 九 結末──脳病院、そして廃人
- 十 重要な設定と伏線
冒頭部(原文より)
恥の多い生涯を送って来ました。自分には、人間の生活というものが、見当つかないのです。自分は東北の田舎に生れましたので、汽車をはじめて見たのは、よほど大きくなってからでした。自分は停車場のブリッジを、上って、降りて、そうしてそれが線路をまたぎ越えるために造られたものだという事には全然気づかず、ただそれは停車場の構内を外国の遊戯場みたいに、複雑に楽しく、ハイカラにするためにのみ、設備せられてあるものだとばかり思っていました。
『人間失格』太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、……神様みたいないい子でした」
『人間失格』太宰治(青空文庫)
名文
恥の多い生涯を送って来ました。
主人公・大庭葉蔵の手記の書き出し。以降の告白全体を貫く自己否定の調子を、この一文が決定づける。
いまは自分には、幸福も不幸もありません。 ただ、一さいは過ぎて行きます。
手記の結びに置かれた一句。幸も不幸も等しく流れ去るという諦念が、葉蔵の長い告白の到達点として示される。
神に問う。無抵抗は罪なりや?
脳病院へ入れられた葉蔵の問い。抗わずに流されてきた自分の一生を、たった一行で神の前へ差し出す。
原文を読む
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