斜陽(太宰治)のあらすじ・登場人物

滅びゆく華族と「斜陽族」

作者
太宰治
発表
1947年(昭和22年)7月
初出
新潮
種別
小説
ジャンル
  • 心理
  • 家族
舞台
  • 静岡県
文字数
89,835字
読了目安
約3時間
表記
新字新仮名

この作品について

太宰治が1947年(昭和22年)、雑誌「新潮」に連載した長編小説。没落しつつある華族の家に生まれた姉弟と母を通して、戦後の価値観の激変の中で古い道徳とともに滅びゆく者と、それでも新しい生き方を模索する者との対照を描く。発表とともに「斜陽族」という流行語を生むほどの反響を呼び、「人間失格」と並ぶ太宰治の代表作として、戦後日本文学を象徴する一作に数えられている。

あらすじ

没落華族のかず子は、病がちな母、そして麻薬中毒から復員してきた弟の直治とともに、東京の家を引き払い伊豆の山荘でつつましく暮らしている。上品でありながら時代についていけない母は静かに衰弱し、放蕩と自己嫌悪を繰り返す直治もまた破滅への道を歩んでいく。かず子は、直治の師である退廃した作家・上原を密かに慕い、道徳を捨てて彼の子を宿すことを自らの「革命」として選び取る。母が息を引き取り、直治もまた遺書を残して自ら命を絶つ中、かず子はただ一人、身重の体で新しい時代を生き抜く決意を固めていく。上原への最後の手紙という形で綴られる終幕には、旧い道徳の滅びと、それでも生きようとする者の強い意志が刻まれている。

登場人物

人物相関図

夫婦。十年前に西片町の家で没母と娘。伊豆で二人きりの日々母と息子。帰還を待ちわびる姉と弟。生涯で一度だけ背く御奉公か縁談かを迫る姉と弟。互いに性格が合わない六年前に離婚。子は死産絵に憧れ恋仲と噂された押しかけ愛人となり子を宿す子を一度だけ抱かせてと乞う夫婦師と仰ぎ酒を教わる秘めた恋。名は遺書で明かす軽蔑しつつ通いつめる夫婦お父上十年前に没したかず子と直治の父お母さま日本で最後の貴婦人わだのおじさま和田の叔父さま母の弟。一家の財産を管理するやまき山木かず子の元の夫かずこかず子没落華族の長女。二十九歳なおじ直治かず子の弟。阿片中毒の復員兵ほそだ細田妻子ある画家。かず子が憧れた上原の奥さま上原の妻。十二、三歳の娘うえはらじろう上原二郎小説家。直治の師。妻子があるスガちゃん洋画家の妻。直治の秘めた恋人洋画家スガちゃんの夫。戦後に名を上げた
人物の関係を整理した相関図(アプリ収録の図をそのまま掲載しています)

章ごとの「厳選あらすじ」

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  1. 一 この作品について
  2. 二 主要人物
  3. 三 主要なサブキャラクター
  4. 四 伊豆へ──蛇の卵と山荘の日々
  5. 五 直治の帰還と「夕顔日誌」
  6. 六 三通の手紙──M・Cへの賭け
  7. 七 母の死──最後の貴婦人
  8. 八 戦闘、開始──上京と恋の成就
  9. 九 直治の遺書と、最後の手紙
  10. 十 重要な設定と伏線

冒頭部(原文より)

朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、 「あ」 と幽かな叫び声をお挙げになった。 「髪の毛?」 スウプに何か、イヤなものでも入っていたのかしら、と思った。

『斜陽』太宰治(青空文庫)

末尾部(原文より)

小さい犠牲者が、もうひとりいました。 上原さん。 私はもうあなたに、何もおたのみする気はございませんが、けれども、その小さい犠牲者のために、一つだけ、おゆるしをお願いしたい事があるのです。 それは、私の生れた子を、たったいちどでよろしゅうございますから、あなたの奥さまに抱かせていただきたいのです。そうして、その時、私にこう言わせていただきます。 「これは、直治が、或る女のひとに内緒に生ませた子ですの」 なぜ、そうするのか、それだけはどなたにも申し上げられません。いいえ、私自身にも、なぜそうさせていただきたいのか、よくわかっていないのです。でも、私は、どうしても、そうさせていただかなければならないのです。直治というあの小さい犠牲者のために、どうしても、そうさせていただかなければならないのです。 ご不快でしょうか。ご不快でも、しのんでいただきます。これが捨てられ、忘れかけられた女の唯一の幽かないやがらせと思召し、ぜひお聞きいれのほど願います。 M・C マイ、コメデアン。 昭和二十二年二月七日。

『斜陽』太宰治(青空文庫)

名文

人間は恋と革命のために生れて来たのだ。

「恋と革命のために生れて来た」と言い切るかず子の一句。没落貴族の家に生きる女の情熱を凝縮した、斜陽の核心。

けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。

上原へ宛てたかず子の手紙の結び。私生児を産む決意を、古い道徳への闘いの宣言として言い切る。

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