日光小品(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
日光から足尾へ旅の小品七編
- 文字数
- 4,111字
- 読了目安
- 約8分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 栃木県
この作品について
日光から足尾へ旅した若き日の芥川龍之介が、宿のランプの下で書いた日記を抄録した短い風景文。「大谷川」「戦場が原」「巫女」「高原」「工場(以下足尾所見)」「寺と墓」「温かき心」の七つの小品からなり、紅葉の谷、荒涼とした沼、足尾銅山の工場、盲のおばあさんと汚れた子どもたちなど、見たものと連想した言葉が静かに並ぶ。末尾に明治四十四年ごろとある。
あらすじ
最初の「大谷川」では、馬返しを過ぎた先の石に腰をおろして、谷底を流れる藍色の川と紅葉の山を眺め、蕪村の句を思い出す。「戦場が原」は、薄氷の残る沼と枯草の高原で、ツルゲーネフの森の旅を考える。「巫女」では、社に座る老いた巫女を見て、春日の森で見た幼い巫女を思い出し、寂しくなる。「高原」は、裏見が滝の帰りに歩く高原の静けさを記す。「工場」では、足尾銅山の溶鉱炉の火と職工の姿に、労働者の真の生活を感じる。「寺と墓」は、荒れた寺と灰色の石ばかりの墓場を何かの象徴のように見る。最後の「温かき心」では、足尾への道で出会った汚れた三人の子どもと盲のおばあさんを見て、クロポトキンの「青年よ、温かき心をもって現実を見よ」を思い出し、人生を見るにはあくまで温かい心でなければならないと考える。編集に急かされ、日記の抄録にとどめたと断る。
冒頭部(原文より)
馬返しをすぎて少し行くと大谷川の見える所へ出た。落葉に埋もれた石の上に腰をおろして川を見る。川はずうっと下の谷底を流れているので幅がやっと五、六尺に見える。
「日光小品」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
私はこんなことを考えながら古河橋のほとりへ来た。そうして皆といっしょに笑いながら足尾の町を歩いた。 雑誌の編輯に急がれて思うようにかけません。宿屋のランプの下で書いた日記の抄録に止めます。 (明治四十四年ごろ)
「日光小品」芥川龍之介(青空文庫)
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