入社の辞(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
大学を辞めて新聞屋になった理由
- 文字数
- 2,081字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
1907年5月、大学の講師の職を辞して朝日新聞社に入った漱石が、入社に際して発表した文章。大学を辞めて新聞屋になると聞いて驚く世間に、ユーモアと皮肉をまじえて答える。大学も新聞も商売だと言い切り、新聞では心置きなく文芸の仕事に打ち込めると語る。
あらすじ
大学を辞めて朝日新聞に入ったと言うと、誰もが驚き、理由を尋ね、大決断だと褒めるが、漱石は不思議な現象とは思わないと言う。成功するかは疑問で、無謀だと驚くなら尤もだが、大学のような栄誉ある位置を抛ったことを驚くなら、やめてもらいたい。新聞屋が商売なら大学屋も商売で、どちらも下卑ていれば同じである。大学で講義がまずかったのは、犬が吠えたせいで、図書館員がうるさかったせいでもあり、学長に書面で訴えたが取り合われなかったと、冗談めかして語る。朝日からは、文芸に関する作物を供給すればよいと誘われ、文芸の述作を生命とする自分には誠に有難いことだった。八百円の年俸では暮らせず、掛け持ちで神経衰弱になったが、辞めた翌日から背中が軽くなった。変わり者として出来得る限りを尽くすのが、朝日に対する自分の嬉しい義務だと結ぶ。
冒頭部(原文より)
大学を辞して朝日新聞に這入ったら逢う人が皆驚いた顔をして居る。中には何故だと聞くものがある。大決断だと褒めるものがある。大学をやめて新聞屋になる事が左程に不思議な現象とは思わなかった。
「入社の辞」夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
変り物の余を変り物に適する様な境遇に置いてくれた朝日新聞の為めに、変り物として出来得る限りを尽すは余の嬉しき義務である。
「入社の辞」夏目漱石(青空文庫)
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