佐渡(太宰治)のあらすじ・登場人物
淋しさを求めて渡った島
- 文字数
- 11,271字
- 読了目安
- 約23分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 新潟県
この作品について
佐渡へ渡った二日間を綴った短編。1941年(昭和16年)1月、雑誌「公論」に発表された。新潟で講演をした翌日、「死ぬほど淋しいところ」と聞いた島に何の理由もなく惹かれて船に乗る。だが着いてみれば、島は素知らぬ振りをして生活を営んでいるばかりで、期待した旅愁はどこにもない。何も起こらない旅を通して、旅愁を求める心のあり方そのものを見つめた一篇。
あらすじ
十一月十七日、細い雨の降る日、私は新潟からおけさ丸に乗った。前日、新潟の高等学校で下手な講演をした、その足である。佐渡は死ぬほど淋しいところだと聞いていた。私には天国よりも地獄のほうが気にかかる——謂わば死に神の手招きに吸い寄せられるように、何の理由もなく島へ渡ったのだ。夷に着き、宿に入り、夜は裏町ばかりを選んで歩き、料亭では山のような料理に閉口する。翌日は二時間バスに揺られて相川へ行った。ここも房州あたりの漁村と変らない。道は白っぽく乾いて、島は素知らぬ振りをして生活を営んでいる。海岸へ行っても山へ登っても、何の感慨も湧いてこなかった。
登場人物
- 私 新潟での講演の翌日、何の理由もなく佐渡へ渡る作家
- 宿の女中 私に茶わんむしをすすめる、母のような口調の現実主義者
冒頭部(原文より)
おけさ丸。総噸数、四百八十八噸。旅客定員、一等、二十名。二等、七十七名。三等、三百二名。賃銀、一等、三円五十銭。二等、二円五十銭。三等、一円五十銭。粁程、六十三粁。新潟出帆、午後二時。佐渡夷着、午後四時四十五分の予定。速力、十五節。何しに佐渡へなど行く気になったのだろう。十一月十七日。ほそい雨が降っている。
「佐渡」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
外は、まだ薄暗かった。私は宿屋の前に立ってバスを待った。ぞろぞろと黒い毛布を着た老若男女の列が通る。すべて無言で、せっせと私の眼前を歩いて行く。 「鉱山の人たちだね。」私は傍に立っている女中さんに小声で言った。 女中さんは黙って首肯いた。 (作者後記。旅館、料亭の名前は、すべて変名を用いた。)
「佐渡」太宰治(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。