酒の追憶(太宰治)のあらすじ・登場人物
ひや酒とチャンポンの思い出
- 文字数
- 6,870字
- 読了目安
- 約14分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
太宰治の随筆。1948年(昭和23年)1月、雑誌「地上」に発表された。久しぶりに小さな盃で日本酒を飲んだことをきっかけに、かつては品のないものとされたひや酒やチャンポンの記憶、評論家の古谷綱武、名優の丸山定夫、劇作家の伊馬春部らとの酒席の思い出を、軽い筆で語る。作者が亡くなるおよそ半年前の作品である。
あらすじ
題の意味を断ったうえで、体調を崩して酒を控えていた作者が久しぶりに二合ほど飲み、感慨にふける。昔は独酌でさえ上品ではなく、コップ酒やひや酒は新派の芝居の悲劇に使われるほどの罪だったと、芝居の場面をまねて笑わせる。生まれてはじめてひや酒を飲んだ、評論家の古谷綱武の家での出来事、名優の丸山定夫がトミイウイスキーを半分だけ置いていく優雅な礼儀、空襲の最中に新宿の「秋田」で開かれた最後の酒宴、そこで伊馬春部が泥酔して全裸に近い姿で道に倒れたてんまつを描く。続いて、チャンポンは豪傑にしか許されない荒事だった学生時代を思い出し、いまではカストリ焼酎まで現れた世相の変化を、悪夢か怪談のようだと結ぶ。
冒頭部(原文より)
酒の追憶とは言っても、酒が追憶するという意味ではない。酒についての追憶、もしくは、酒についての追憶ならびに、その追憶を中心にしたもろもろの過去の私の生活形態についての追憶、とでもいったような意味なのであるが、それでは、題名として長すぎるし、また、ことさらに奇をてらったキザなもののような感じの題名になることをおそれて、かりに「酒の追憶」として置いたまでの事である。
「酒の追憶」太宰治(青空文庫)
末尾部(原文より)
さいきん私は、からだ具合いを悪くして、実に久しぶりで、小さい盃でちびちび一級酒なるものを飲み、その変転のはげしさを思い、呆然として、わが身の下落の取りかえしのつかぬところまで来ている事をいまさらの如く思い知らされ、また同時に、身辺の世相風習の見事なほどの変貌が、何やら恐ろしい悪夢か、怪談の如く感ぜられ、しんに身の毛のよだつ思いをしたことであった。
「酒の追憶」太宰治(青空文庫)
原文を読む
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