漱石山房の秋(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
漱石山房、秋の夜の室内
- 文字数
- 1,616字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 東京都
この作品について
夏目漱石の書斎「漱石山房」の秋の夜の様子を、門から玄関、客間、次の間、書斎の机まで、順に視線を移しながら描いた随筆。壁の軸や額、書棚、紫檀の机、座蒲団の上の老人と、室内の細部を積み重ねて、末尾の「蕭條たるものであつた」に集める。1920年1月、「大阪毎日新聞」に掲載された。
あらすじ
夜寒の坂道を上ると、板屋根の古い門があり、庭には落葉が散り乱れている。蔦に蔽われた玄関の格子戸の前で呼鈴を探すと、束髪の女中が出てくる。廊下の外には木賊が庭を埋めている。客間は天井に雨漏りの痕と鼠の食った穴が残り、赤い五羽鶴の毯が敷かれ、壁には軸や油絵、額が掛けられ、洋書の詰まった本箱が並ぶ。次の間は板敷きで、古絨毯のほか畳は敷かれておらず、新旧和漢洋の書物が書棚から溢れている。そのまん中の紫檀の机の向こう、二枚重ねた座蒲団の上に、獅子を思わせる背の低い半白の老人が、手紙を書いたり、唐本の詩集を繙いたりしながら端然と座っている。漱石山房の秋の夜はこのように蕭條たるものであった、と結ぶ。
冒頭部(原文より)
夜寒の細い往来を爪先上りに上つて行くと、古ぼけた板屋根の門の前へ出る。門には電灯がともつてゐるが、柱に掲げた標札の如きは、殆ど有無さへも判然しない。門をくぐると砂利が敷いてあつて、その又砂利の上には庭樹の落葉が紛々として乱れてゐる。 砂利と落葉とを踏んで玄関へ来ると、これも亦古ぼけた格子戸の外は、壁と云はず壁板と云はず、悉く蔦に蔽はれてゐる。
「漱石山房の秋」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
漱石山房の秋の夜は、かう云ふ蕭條たるものであつた。
「漱石山房の秋」芥川龍之介(青空文庫)
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