漱石山房の冬(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
没後七年、漱石山房を訪ねる
- 文字数
- 1,559字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 東京都
この作品について
漱石の没後七年がたったころ、旧友の案内で若い友人とともに、久しぶりに漱石山房の書斎を訪ねる随筆。当時の書斎の様子と、学生だったころに先生から聞いた話、没後に奥さんから聞いた先生の思い出とが、現在の訪問に重ねて記される。1923年1月の「サンデー毎日」に掲載された。末尾の日付は大正十一年十二月。
あらすじ
わたしは年少のW君、旧友のMとともに、久しぶりに先生の書斎へ入る。建て直されて日当たりが悪くなり、五羽鶴の毯は色があせ、更紗の唐紙のあった所は先生の写真のある仏壇に変わっているが、書棚も「無絃琴」の額も紫檀の机も、天井の鼠の穴も、先生の歿後七年のいまも同じままだった。そこでわたしは、十一月のある夜に先生が学生の客三人に「生涯に三度しか万歳を唱えたことがない」と話したこと、十月の夜に濫作を戒められたこと、十二月の夜に奥さんから、先生が床板を洩れる風に悩まされながら傲語していたと聞いたことを思い出す。その追憶を、W君の言葉が打ち破る。三十分後、わたしは埃風の吹く町をW君と歩いていた。W君は書斎が冬は寒かったでしょうと話しかけ、わたしは何かが湧き上がるのを感じるが、W君が末次平蔵と異国御朱印帳の話を始めると、その軽薄を憎みながら黙って歩き続ける。
冒頭部(原文より)
わたしは年少のW君と、旧友のMに案内されながら、久しぶりに先生の書斎へはひつた。 書斎は此処へ建て直つた後、すつかり日当りが悪くなつた。それから支那の五羽鶴の毯も何時の間にか大分色がさめた。最後にもとの茶の間との境、更紗の唐紙のあつた所も、今は先生の写真のある仏壇に形を変へてゐた。
「漱石山房の冬」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
わたしは黙然と歩き続けた。まともに吹きつける埃風の中にW君の軽薄を憎みながら。
「漱石山房の冬」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。