雀の卵(北原白秋)のあらすじ・登場人物
貧窮の日々に編んだ命がけの歌集
- 文字数
- 41,522字
- 読了目安
- 約1時間23分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
北原白秋の歌集。1921年(大正10)刊。小田原の木兎の家で、貧窮のなか餓死を覚悟する日々を耐えながら編んだ命がけの一巻と、巻頭の大序に記されている。「雀」は貧しく小さい生き物の象徴でもあり、散文詩「雀の生活」や散文抄「童心」とあわせて読むと、当時の暮らしがよくわかる。雲母集以後の、透明で簡素な歌境を示す。
あらすじ
大序は、四校の訂正を終えた夏の日の描写から始まる。窓の外には小竹林の鮮緑の光、松に鳴く蝉、藍色の海、燕、枇杷の木の雀、そして盂蘭盆の笛と太鼓の音。作者は「この一巻こそ私の命がけのものであつた」と書き、貧窮の極み、餓死を目前にしてなお堪えとおしたのも、これらの歌のためだったと振り返る。巻末の覚書では、自分で好きなのは「白牛」の一章だけで、そのほかは弟の意見に従ったと述べ、本集に歌われた生活は長篇散文詩「雀の生活」(新潮社版)と散文抄「童心」(春陽堂版)にも見られるので参照してほしいと勧めている。
冒頭部(原文より)
大序 一 「雀の卵」が完成した。いよいよ完成した。と、思ふと思はず深い溜息がつかれた。ほつとしたのである。 今、四校目の訂正をして、やつと済ましたところである。窓から見てゐると裏の小竹林には鮮緑色の日光が光りそよいでゐる。丘の松には蝉が鳴いて、あたりの草むらにも草蝉が鳴きしきつてゐる。南のバルコンに出て見ると、海がいい藍色をしてゐる。寺内の栗やかやの木や孟宗の涼しい風の上を燕が飛び翔つてゐる。雀も庭の枇杷の木の上で何かしてゐる。瀬の音もするやうだが、向ふの松風の下から浮々した笛や太鼓の囃子がきこえる。今日は盂蘭盆の十四日である。
「雀の卵」北原白秋(青空文庫)
末尾部(原文より)
この中で「白牛」だけは自分でも好きである。 雀の生活と童心 本集を読まれる方は長篇散文詩「雀の生活」と散文抄「童心」とを是非参照してほしい。本集に歌はれた私の生活がはつきりわかるからである。前者は新潮社版、後者は春陽堂の版である。 以上
「雀の卵」北原白秋(青空文庫)
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