すゞろごと(樋口一葉)のあらすじ・登場人物
初音を待つ夜の小話
- 文字数
- 1,262字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
樋口一葉の小品。ほととぎすの声をまだ聞いたことのない作者が、初音を待ちわびて眠れぬ夜を重ねる。節題は「ほとゝぎす」の一つだけで、身辺のできごとを和文調で綴る。題は「とりとめのない話」の意。底本は小学館『全集樋口一葉 第二巻 小説編二』。
あらすじ
ほととぎすの声をまだ知らない作者は、訪ねてきた人から、夜ふけに枕もとで耳を澄ませば、近くで聞くと怪しい一声だが遠ざかる声がしみじみと哀れだと教えられる。旧暦五月の今こそと夜ごと待ち、暁近くにうとうとした耳もとで、その声を聞く。起き出して空を見上げるが姿はなく、口惜しく心にしみる。翌朝は歌を詠む友にこのことを知らせようとしてそのままにしたが、夜になるとまた鳴き続けた。三日ほどあと、不意に訪ねてきた友にこの話を打ち明けようとして、折よく軒近くで鳴く声を指し「あれをお聞きなさい」と言うと、友は怪訝な顔をする。事情を話すと友は笑い出し、その声は朝から夕方まで軒にいつも来ている鳥のものだと言う。作者は納得しかねて抗うが、友は飛んでいく姿を指さして見せ、夢が覚めなければおもしろかったのにと結ぶ。
冒頭部(原文より)
ほとゝぎすの声まだしらねば、いかにしてか聞かばやと恋しがるに、人の訪ひ来て、「何かは聞えぬ事のあるべき。我が宿の大樹にはとまりてさへ鳴くものを、夜ふけ枕にこゝろし給へ。近く聞く時は唯一こゑあやしき音に聞きなさるれど、遠くなりゆく声のいと哀れなるぞ」と教へられき。
「すゞろごと」樋口一葉(青空文庫)
末尾部(原文より)
「さにはあるまじ。いかで山がらすをさはおもふべき。あの鳴ね聞き給へ、よもあやまらじ」と不審かしうなりて言へば、「月夜に寝ほうけて鳴出る時は常の声とも異なりぬべし。今のなく音は何かは異ならん。あれ見給へ、飛びゆく姿もさやかなるを」と指さゝれて、あはれこの子規いつも初音をなく物になりぬ。覚めずは夢のをかしからましを。
「すゞろごと」樋口一葉(青空文庫)
原文を読む
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