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闇桜(樋口一葉)のあらすじ・登場人物

幼馴染への思いが恋に変わる

  • 恋愛

樋口一葉 1892年(明治25年)3月 「武蔵野」

文字数
4,333字
読了目安
約9分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1892年3月、半井桃水の主宰する「武蔵野」第一編に発表された、樋口一葉の小説の出発点。隣り合う中村家と園田家には、十六歳の千代と二十二歳の良之助がいる。幼い頃から兄妹のように親しみ、縁日でも無邪気に言い合う二人だが、友人のからかいを聞いた千代は、これまでと違う気持ちを意識し始める。会いたいのに恥ずかしく、優しい言葉さえ苦しくなる。その心の揺れが、相手に伝わらない内なる言葉として細やかに綴られる。両家が一本の梅を眺める冒頭から、花や季節の情景が人の心と寄り添い、雅やかな地の文の中には、若者同士の軽やかな会話も響く。人目を意識した途端、それまで自然だった振る舞いが難しくなるという恋の始まりを描く短編。一葉の後年の作品を知る読者には、初期の装飾的な文章と、身近な人間関係を捉える視線を併せて味わえる。

あらすじ

中村家と園田家は中垣を隔てて軒を並べ、園田の良之助と中村の一人娘・千代は兄妹のように育った。十六になった千代は、良之助をからかった友の何気ない一言をきっかけに、おのれの心が幼馴染への情を越えてしまったことに気づく。想いは口にできぬまま日ごとに募り、千代は次第に食も細り、床に伏すようになる。母は千代の病を案じて祈祷にすがり、良之助も足しげく見舞うが、それが恋の病とは知る由もない。見舞われるたびに千代の心は乱れ、病はかえって重くなっていく。桜の盛りの夕暮れ、死期を悟った千代は、枕辺の良之助に帰ってほしいと告げる。せめて臨終の際まで心づかいをさせまいとする娘心である。屏風の外へ立つ良之助を、糸より細い声が呼び止める。「お詫は明日」。風もない軒端の桜がほろほろとこぼれ、夕闇の空に鐘の音が悲しく響くのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

隔ては中垣の建仁寺にゆづりて汲かはす庭井の水の交はりの底きよく深く軒端に咲く梅一木に両家の春を見せて薫りも分ち合ふ中村園田と呼ぶ宿あり園田の主人は一昨年なくなりて相続は良之助廿二の若者何某学校の通学生とかや。

「闇桜」樋口一葉(青空文庫)

末尾部(原文より)

臨終に迄も心づかひさせんことのいとをしくて屏風の外に二足ばかり糸より細き声に良さんと呼び止められて何ぞと振り返へれば。お詫は明日。風もなき軒端の桜ほろ/\とこぼれて夕やみの空鐘の音かなし

「闇桜」樋口一葉(青空文庫)

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