点頭録(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
大戦下に漱石が見た軍国主義
- 文字数
- 12,773字
- 読了目安
- 約26分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
1916年1月から『東京朝日新聞』に載った漱石の時評的な随想。年頭の感慨に始まり、第一次世界大戦のさなかに、軍国主義の意味を論じ、ニーチェ、ヘーゲル、トライチケらの思想とドイツの政治との関係を考える。亡くなる前年の漱石が、戦争と文明を見つめた文章である。
あらすじ
冒頭の「一」で漱石は、また正月が来たと振り返る。過去が夢のようで、現在の我だけが確実だという二つの見方を、矛盾なく抱いて大正五年の潮流に任せ、趙州和尚のように余命を尽くそうとする。「二」から「五」では、欧州戦争が起こったとき、どんな影響が出るかと問われたことから、この戦争は宗教にも道義にも深い根を持たず、善や真や美を左右することはないと考えるに至る。それでも、強制徴兵案を通した英国や、領土を脅かされたフランスの思想に、ドイツの軍国主義が影響を及ぼしているとして、自由を重んじる国々がそれに引きずられることを悲しむ。「六」から「九」では、英仏の評論家がニーチェやヘーゲル、トライチケの思想を戦争の背景に数えることに触れる。トライチケの生涯と国家主義を紹介し、その主張がドイツ統一の前には必要だったが、統一後には不必要で不合理ではないのかと疑う。最後に、ドイツが世界を征服したとき、人類はその報酬として何を与えられるのか、と問う。
冒頭部(原文より)
また正月が来た。振り返ると過去が丸で夢のやうに見える。何時の間に斯う年齢を取つたものか不思議な位である。 此感じをもう少し強めると、過去は夢としてさへ存在しなくなる。
「点頭録」夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
然しながら、我々人類が悉く独乙に征服された時、我々は其報酬として独乙から果して何を給与されるのだらう。独乙もトライチケもまづ其所から説明してかゝらなければならない。
「点頭録」夏目漱石(青空文庫)
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