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追憶(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

四十四の断章で綴る少年時代

芥川龍之介 1926年(昭和元年)4月 「文藝春秋」

文字数
11,305字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 東京都

この作品について

芥川龍之介が幼いころから中学時代までの記憶を、「埃」「位牌」「庭木」「猫の魂」「幼稚園」「相撲」「中洲」「いじめっ子」「日本海海戦」「渾名」など、四十四の短い断章で綴った回想録。生家のあった東京の本所の町や学校、家族の記憶が、淡々と、しかし鋭い観察で描かれる。「文藝春秋」に1926年4月号から翌年2月号にかけて連載された。

あらすじ

記憶の始まりは数え年の四つ、大工の広さんが天井を玄能で叩き、埃が出る光景だった。仏壇の大きな位牌からは、二人の娘を二人とも花魁に売ったという曾祖父の話が語られる。庭の木、猫の魂、草双紙、お狸様、蘭の花、夢中遊行と、幼いころの記憶が続き、学校では幼稚園、相撲、加藤清正の話、動員令、日本海海戦の祝賀などが出てくる。中洲の芝居や活動写真、川開きの花火、水泳、いじめっ子との関係、答案や勉強、金、虚栄心を通して、少年が世間を覚えていく様子が描かれる。最後は中学時代の発火演習と渾名の話で、文章では真実を伝えきれないという感想で締めくくられる。

冒頭部(原文より)

 僕の記憶の始まりは数え年の四つの時のことである。と言ってもたいした記憶ではない。ただ広さんという大工が一人、梯子か何かに乗ったまま玄能で天井を叩いている、天井からはぱっぱっと埃が出る――そんな光景を覚えているのである。

「追憶」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

 あらゆる東京の中学生が教師につける渾名ほど刻薄に真実に迫るものはない。僕はあいにく今日ではそれらの渾名を忘れている。が、今から四、五年前、僕の従姉の子供が一人、僕の家へ遊びに来た時、ある中学の先生のことを「マッポンがどうして」などと話していた。僕はもちろん「マッポン」とはなんのことかと質問した。 「どういうことも何もありませんよ。ただその先生の顔を見ると、マッポンという気もちがするだけですよ」  僕はそれからしばらくののち、この中学生と電車に乗り、偶然その先生の風に接した。するとそれは、――僕もやはり文章ではとうてい真実を伝えることはできない。つまりそれは渾名どおり、正に「マッポン」という感じだった。

「追憶」芥川龍之介(青空文庫)

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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