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釣り師の心境(坂口安吾)のあらすじ・登場人物

釣り師の心境はよく分からない

坂口安吾 1949年(昭和24年)8月 「文学界」

文字数
5,544字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

自身はほとんど魚釣りをしないという坂口安吾が、取手に住んだ頃の釣り好きの人々、小田原で三好達治と釣った鮎、終戦の年の羽田でのハマグリ拾いを語る、昭和24年の随筆。「釣り師の心境」という題のとおり、微妙な心境を語りたがる釣り人たちの様子が、からかい気味の筆で描かれる。小林秀雄、島木健作らの名前も出る、文壇の交友を伝える軽い読み物である。

あらすじ

筆者は魚釣りにあまり縁がないが、釣りの好きな人々には縁があった。取手に一年ほど住んだとき、本屋の主人や下村千秋、上泉秀信が釣りに来て、旅館の息子の案内で古利根へ出かけたが、肥え溜めの横の水溜りで血走って糸を垂れる姿は、風流とは程遠かった。翌年、小田原へ移ると、三好達治が鮎の解禁日を前に釣り竿の手入れに熱中していて、筆者もメダカほどの鮎を三日ほど釣った。解禁の日に小林秀雄と島木健作を呼んで鮎を食べたが、酒が入ると、三好は萩原朔太郎をめぐる論戦の末に泣き出して怒ってしまった。終戦の年の五月には、焼け野原の羽田の海へ潮干狩りに行き、空襲警報の中で材木のふりをしてハマグリを探した。帰りに巡査にバスはないかと尋ねると、今の日本には足よりも確かな交通機関はないよ、と言われたのだった。

冒頭部(原文より)

私は妙に魚釣りに縁のあるあたりに住んできたが、小田原で三日間ぐらい鮎釣りをした以外は魚を釣ったことがない。先日もお医者さんから、早朝の魚釣りなどは健康によろしいから、とすゝめられたが、なるほど今住むところも、わざ/\東京から釣りにくる人があって、それを目当てのボート屋などもある土地だが、釣りをする気持にはなれないのである。

「釣り師の心境」坂口安吾(青空文庫)

末尾部(原文より)

大きな袋をかついで帰路につき、疲れ果て、巡査にバスはないかときくと、 「今の日本には、足よりも確かな交通機関はないよ、君」  と、肩をポンとたゝかれたのである。

「釣り師の心境」坂口安吾(青空文庫)

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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