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わが散文詩(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物

線香の少女と日本の聖母

芥川龍之介 1922年(大正11年)12月

文字数
3,499字
読了目安
約7分
表記
新字旧仮名
種別
随筆

この作品について

芥川龍之介の散文詩集。文末に(大正十一年十二月)とあり、「秋夜」「椎の木」「虫干」「線香」「日本の聖母」「玄関」の六篇からなる。「日本の聖母」は、天草の海辺で日本風の聖母を描いた画師山田右衛門作を主人公に、聖母との短いやりとりを描く。

あらすじ

六つの散文詩を収める。「秋夜」は、炭火に落ちた木の葉の煙を嗅ぐ夜のひとときを、家人の声の断片とともに描く。「椎の木」は、つつましく着実な椎の木の姿を讃える。「虫干」は、祖父や母が着た衣類をめぐる追憶を、窓辺の気配の描写とともに重ねる。「線香」は、北京の妓院で、線香の煙の前で身じろぎもしない少女の病的な表情を見た記憶を描く。「日本の聖母」では、画師が日本の娘の姿で描いた聖母に夢の中で聖母が現れ、これは誰の姿かと尋ねる。画師は、日本の画師は聖母をも日本人にするほかないと答え、聖母は得心して微笑む。「玄関」では、玄関の履物の変化から、その家の移ろいを想像する。

冒頭部(原文より)

秋夜  火鉢に炭を継がうとしたら、炭がもう二つしかなかつた。炭取の底には炭の粉の中に、何か木の葉が乾反つてゐる。何処の山から来た木の葉か?――今日の夕刊に出てゐたのでは、木曾のおん岳の初雪も例年よりずつと早かつたらしい。 「お父さん、お休みなさい。」  古い朱塗の机の上には室生犀星の詩集が一冊、仮綴の頁を開いてゐる。「われ筆とることを憂しとなす」――これはこの詩人の歎きばかりではない。

「わが散文詩」芥川龍之介(青空文庫)

末尾部(原文より)

あの小さい女の子の下駄には、それだけ又同情も深かつたことを。  最後にあの乳母車! あれはつい四五日前から、格子戸の中にあるやうになつた。見給へ、男女の履き物の間におしやぶりも一つ落ちてゐるのを。  わたしは夜寒の裏通りに、あかあかと障子へ火の映つた、或家の玄関を知つてゐる。丁度まだ読まない本の目次だけざつと知つてゐるやうに。

「わが散文詩」芥川龍之介(青空文庫)

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