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幽霊塔(黒岩涙香)のあらすじ・登場人物

時計塔の底に眠る宝

  • ミステリ
  • 怪奇

黒岩涙香 1899年(明治32年)8月 「萬朝報」

文字数
257,851字
読了目安
約8時間36分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

「有名な幽霊塔が売り物に出たぜ」——その一行から始まる、黒岩涙香の翻案長編の代表作。英国のウィリアムスン夫人「灰色の女」を下敷きに、舞台はイギリスのまま人名だけを日本風に置きかえて「萬朝報」に連載された。時計塔の底に眠るという宝、そこで起きた過去の殺人、謎めいた美女・秀子、無数の蜘蛛を飼う養蟲園。次から次へと仕掛けが繰り出される速度は驚くほどで、のちに江戸川乱歩がみずから書き直したほど日本の読者に愛された。少年時代にこれを読んで震えた作家は数知れない。

あらすじ

検事総長を辞して閑散に世を送っている叔父・丸部朝夫が、売りに出た「幽霊塔」を買うと言い出した。幽霊塔はもと叔父と同姓の家筋の屋敷で、その零落によって人手に渡っていたのである。買い受けの一切を任された「余」——甥の丸部道九郎は、荒れ果てた屋敷に足を踏み入れ、そこで美しい謎の女・秀子に出会う。彼女は塔にまつわる秘密を知っているらしく、権田という無頼漢に一身の命令権を与えているようでもあり、その関係はどうしても腑に落ちない。……屋敷には、時計塔の底に莫大な宝が隠されているという伝説があり、過去にはその宝をめぐる殺人事件も起きていた。宝の在処を示す暗号、秀子の背負う「密旨」、探偵・森主水の追跡、そして無数の蜘蛛を飼う不気味な養蟲園を営む虎井夫人。余は秀子への思いと疑いのあいだで揺れながら、次々に襲いかかる罠と危機をくぐり抜けてゆく。物語の果て、虎井夫人は狐猿を残して姿を消し、弟の穴川甚蔵や医学士とともに濠洲へ出奔したらしいと知れる。養蟲園はがら空きになり、幾百千とも数知れぬ蜘蛛が巣を張るばかりである。そして塔の底の宝は——血統の上から言えば余のものでも叔父のものでもなく、まったく春子のものであった。

登場人物

冒頭部(原文より)

第一回 ドエライ宝 「有名な幽霊塔が売り物に出たぜ、新聞広告にも見えて居る」  未だ多くの人が噂せぬ中に、直ちに買い取る気を起したのは、検事総長を辞して閑散に世を送って居る叔父丸部朝夫である。

「幽霊塔」黒岩涙香(青空文庫)

末尾部(原文より)

 シテ彼の塔の底の宝は、然し彼の宝は血統の上から余の物でも叔父の物でもなく、全く春子の物である、其の仔細は叔父朝夫は丸部総本家から数代前に分れた家筋で血筋が遠い、血筋の一番近いのは叔父の妻で有った夫人で、其の死んだ後は其の腹に出来た春子が当

「幽霊塔」黒岩涙香(青空文庫)

名文

「有名な幽霊塔が売り物に出たぜ、新聞広告にも見えて居る」

黒岩涙香『幽霊塔』(ウィリアムソン作『灰色の女』を翻案)の書き出し。幽霊塔を買い取る叔父の一言から、怪事件が動き出す。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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