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鼠坂(森鴎外)のあらすじ・登場人物

新築祝いの夜に語られる戦場の話

  • 怪奇
  • ミステリ

森鴎外 1912年(大正元年)4月 「中央公論」

文字数
7,662字
読了目安
約15分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

『中央公論』1912年4月号に載った短編。小日向の鼠坂に新築された成金の邸の新宅祝いに、日露戦争の満洲で稼いだ主人と、新聞記者、通訳あがりの客が集まり、酒の勢いで戦地の思い出が語られる。そこで出た話の一つが、泊まった客の夜にどう響くのかを、静かな怪談めいた筆致で追う。

あらすじ

小日向の鼠坂のそばの空き地に、深淵という成金の大きな邸が建ち、二月十七日の晩、新宅祝いの宴が開かれる。満洲で金を儲けたという主人と、新聞記者の小川、通訳あがりの平山が、酒を飲みながら戦地の思い出を語り合う。驢馬や騾馬をめぐる笑い話のあと、主人は、営口で酔った小川が打ち明けたという、凄い事件の話をもちだす。ある冬の夜、宿営の村で、小川は隣の空き家の奥に隠れていた若い清国の女を見つけた。小川がその女に何をし、どうなったかを、主人は小川の制止にもかかわらず語り、小川は青ざめる。その日が七回忌に当たると、主人は言う。宴のあと、小川は二階の西洋まがいの部屋に通されて寝る。夜中に目を覚ますと、壁に貼った「立春大吉」の紅唐紙が裂けてぶら下がり、その下に、あの女が仰向けに寝ているのが見えた。小川は悲鳴を上げて倒れ、翌朝、邸には医者や警察が駆けつける。新聞には、新宅祝いの宴会で主人の親友が脳溢血で死んだという、平凡な記事が載った。

登場人物

冒頭部(原文より)

小日向から音羽へ降りる鼠坂と云う坂がある。鼠でなくては上がり降りが出来ないと云う意味で附けた名だそうだ。

「鼠坂」森鴎外(青空文庫)

末尾部(原文より)

その次の日の新聞を、近所の人は待ち兼ねて見た。記事は同じ文章で諸新聞に出ていた。多分どの通信社かの手で廻したのだろう。しかし平凡極まる記事なので、読んで失望しないものはなかった。 「小石川区小日向台町何丁目何番地に新築落成して横浜市より引き移りし株式業深淵某氏宅にては、二月十七日の晩に新宅祝として、友人を招き、宴会を催し、深更に及びし為め、一二名宿泊することとなりたるに、其一名にて主人の親友なる、芝区南佐久間町何丁目何番地住何新聞記者小川某氏其夜脳溢血症にて死亡せりと云ふ。新宅祝の宴会に死亡者を出したるは、深淵氏の為め、気の毒なりしと、近所にて噂し合へり。」

「鼠坂」森鴎外(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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