双生児(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
双子と指紋をめぐる告白
- ミステリ
- 怪奇
- 文字数
- 12,029字
- 読了目安
- 約24分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1924年(大正13年)、「新青年」に発表した短編。死刑を目前にした男が、牧師に向かって、まだ誰にも知られていないもう一つの重大な罪を告白する、という手記形式の物語。双子と指紋をめぐる恐るべき偶然を、乱歩が指紋トリックを鮮やかに用いて描いた、初期の代表的短編である。
あらすじ
死刑の日が近づいた男が、面会に来た牧師を相手に、心の重荷をおろすように語りはじめる。彼は、ある男を殺してその金庫から三万円を盗んだ罪で死刑を宣告されたのだが、実はそれ以前に、もう一つの、より重い殺人を犯していた。うり二つの双子の兄——放蕩者の自分とは違い、裕福で美しい妻を持つ兄——を亡き者にし、そっくりの容貌を利用して兄になりすまし、その財産と妻とを我がものにしていたのだ。その完全犯罪が露見しなかったのに、なぜ今になって死刑を宣告される羽目になったのか。そこには、指紋をめぐる恐るべき皮肉が隠されていた。かつて福岡で起きた実際の事件——現場の指紋が「陰画(ネガ)」のように反転していたために迷宮入りしかけた例——になぞらえて、男は自らを破滅させた運命のからくりを明かす。妻にだけは知られたくなかったその秘密を、死を前にして告白せずにはいられなかった男の述懐が、静かな戦慄を呼ぶ。乱歩が指紋トリックを駆使した、初期の名短編である。
冒頭部(原文より)
先生、今日こそは御話することに決心しました。私の死刑の日も段々近づいて来ます。早く心にあることを喋って了って、せめて死ぬ迄の数日を安らかに送り度いと思います。どうか、御迷惑でしょうけれど、暫らくこの哀れな死刑囚の為に時間を御割き下さい。 先生も御承知の様に、私は一人の男を殺して、その男の金庫から三万円の金を盗んだ廉によって死刑の宣告を受けたのです。誰もそれ以上に私を疑うものはありません。
「双生児」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
これですっかりお話し度い丈けのことは、お話して了いました。面白くもないことに、大変時間をお取らせして済みませんでした。どうか、先程の御約束通り、これを裁判官の方々と私の妻とにお伝え願います。私は御約束を履行して頂けるものと安心して死刑台に上ります。では、呉れ呉れも哀れな死刑囚の死に際の御頼みをお聞届け下さいます様に。
「双生児」江戸川乱歩(青空文庫)
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