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活人形(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

探偵が挑む鎌倉の妖物屋敷

  • ミステリ
  • 怪奇

泉鏡花 1893年(明治26年)5月 「探偵小説」

文字数
40,978字
読了目安
約1時間22分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 神奈川県

この作品について

泉鏡花の初期作で、1893年(明治26年)5月、春陽堂の「探偵小説」の第十一集として刊行された。探偵の倉瀬泰助が、毒を飲まされた青年の頼みを受けて、鎌倉雪の下の「妖物屋敷」に乗り込み、悪党・赤城得三に幽閉された姉妹の救出に挑む。亡き母に似せた人形と、壁の仕掛け、幽霊騒ぎなど、見世物めいた趣向に満ちている。

あらすじ

東京の病院に、毒を盛られたという青年が担ぎ込まれる。本間次三郎と名乗る彼は、鎌倉の赤城家で叔母の娘、下枝・お藤の姉妹とともに育ったが、叔母の死後、後見人の赤城得三に家を追われた。得三は財産を奪おうと姉妹を虐待しており、青年は救いを求めて、名探偵の倉瀬泰助を訪ねてきたのだった。泰助は鎌倉に乗り込むが、頬の三日月形の傷が露れて、得三一味に気づかれてしまう。泰助が投宿した旅館に、座敷牢を抜け出した下枝がたどり着くが、得三の手下が追ってくる。赤城家では、得三がお藤を高利貸の高田に差し出し、亡き母に似せた人形の背後の隠し部屋で婚礼を強いる。泰助は日蔽の陰に潜んで機をうかがい、お藤を救い出して逃れるが、短銃で撃たれて倒れる。しかしこれは血を装った芝居で、泰助は死んだふりを続け、悪党たちの動きを探る。得三は高田を殺して自殺に見せかけ、下枝を虐殺して罪をなすりつけようとする。刃が下枝に迫ったとき、泰助と宿の主人は人形と下枝を取り替える計略で下枝を救い出す。夜明けに警官を連れて戻ると、得三は自殺し、老婆のお録も殺されていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 雲の峰は崩れて遠山の麓に靄薄く、見ゆる限りの野も山も海も夕陽の茜に染みて、遠近の森の梢に並ぶ夥多寺院の甍は眩く輝きぬ。処は相州東鎌倉雪の下村……番地の家は、昔何某とかやいえりし大名邸の旧跡なるを、今は赤城得三が住家とせり。 門札を見て、「フム此家だな。と門前に佇みたるは、倉瀬泰助という当時屈指の探偵なり。色白く眼清しく、左の頬に三日月形の古創あり。こは去年の春有名なる大捕物をせし折、鋭き小刀にて傷けられし名残なり。探偵の身にしては、賞牌ともいいつべき名誉の創痕なれど、衆に知らるる目標となりて、職務上不便を感ずること尠からざる由を喞てども、巧なる化粧にて塗抹すを常とせり。

「活人形」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 暗号一発捕吏を整え、倉瀬泰助疾駆して雪の下に到り見れば、老婆録は得三が乱心の手に屠られて、血に染みて死しいたり。更に進んで二階に上れば、得三は自殺して、人形の前に伏しいたり。 旭の光輝に照らされたる、人形の瞳は玲瓏と人を射て、右眼、得三の死体を見て瞑するがごとく、左眼泰助を迎えて謝するがごとし。五体の玉は乱刃に砕けず左の肩わずかに微傷の痕あり。

「活人形」泉鏡花(青空文庫)

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