雑信一束(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
漢口から奉天まで二十の絵葉書
- 文字数
- 1,798字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
芥川龍之介の紀行。1921(大正10)年の中国旅行を題材に、漢口から長沙、洛陽、北京、天津、奉天まで、行く先ごとの見聞を二十の短い断章にまとめる。のちに「支那游記」(1925年11月、改造社)に収められた。会話体や発句も交え、旅先の印象を写真のように切り取る。
あらすじ
「欧羅巴的漢口」「支那的漢口」に始まり、黄鶴楼、古琴台、洞庭湖、長沙と、長江をさかのぼる旅の断片が続く。排日で筆記具を使わない女学生、土匪を恐れる寝台車、街頭にぶら下がった辮髪、洛陽の麦ほこり、龍門の石仏を題材に、短い描写に皮肉と驚きをこめる。北京では前門、監獄、万里の長城、石仏寺と進み、乞食童子に「蒙古!」と呼ばれる場面もある。天津で北京が恋しくなり、奉天の駅で日本人の群れを見て黄禍論に傾きかけたと書き、南満州鉄道の高粱の根を這う一匹の百足で終わる。
冒頭部(原文より)
一 欧羅巴的漢口 この水たまりに映っている英吉利の国旗の鮮さ、――おっと、車子にぶつかるところだった。 二 支那的漢口 彩票や麻雀戯の道具の間に西日の赤あかとさした砂利道。其処をひとり歩きながら、ふとヘルメット帽の庇の下に漢口の夏を感じたのは、―― ひと籃の暑さ照りけり巴旦杏 三 黄鶴楼 甘棠酒茶楼と言う赤煉瓦の茶館、惟精顕真楼と言うやはり赤煉瓦の写真館、――その外には何も見るものはない。
「雑信一束」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
僕――こう言う西洋風の町を歩いていると、妙に郷愁を感じますね。 西村さん――お子さんはまだお一人ですか? 僕――いや、日本へじゃありません。北京へ帰りたくなるのですよ。 十九 奉天 丁度日の暮の停車場に日本人が四五十人歩いているのを見た時、僕はもう少しで黄禍論に賛成してしまう所だった。 二十 南満鉄道 高粱の根を葡う一匹の百足。
「雑信一束」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。