発禁(発売禁止)とは
- 分類
- その他
- 読み
- はっきん
風俗を乱す(風俗壊乱)、あるいは社会の安寧を害する(安寧秩序紊乱)とみなした出版物の発売・頒布を、国家が禁じた検閲処分。明治から昭和の敗戦まで内務省がこの権限をもち、多くの文学作品がその対象となった。性を率直に主題とした森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』は、明治42年(1909年)に掲載誌「スバル」もろとも発売禁止となり、同じ年、永井荷風が西洋帰りの見聞に日本の官憲や風俗への批判をにじませた『ふらんす物語』も、刊行の届け出と同時に発禁とされた。谷崎潤一郎の作品を載せた「三田文学」の号や、パンの会の同人誌「屋上庭園」も処分を受けている。昭和に入ると弾圧は思想へも及び、小林多喜二の『蟹工船』は伏字だらけで刊行されたうえ発禁となった。作家たちは伏字や表現の工夫で検閲をかわそうとし、検閲との緊張関係は近代文学の表現そのものを深く規定した。