政治小説とは
- 分類
- 形式・ジャンル
- 読み
- せいじしょうせつ
明治10年代半ばから20年代はじめにかけて、自由民権運動のなかで書かれた、政治思想の宣伝と啓蒙を目的とする小説。書き手の多くは運動の当事者で、西洋や古代の史実に仮託して立憲政治の理想を語り、国会開設をめざす青年たちに広く読まれた。矢野龍渓が古代ギリシアに材を取って立憲改進党の理想を描いた『経国美談』(明治16年〜17年)、東海散士が各国の独立運動に義憤を寄せる『佳人之奇遇』(明治18年〜)、末広鉄腸の『雪中梅』(明治19年)が代表作である。文体は漢文調で、人物が作者の思想の代弁者にとどまることも多く、小説としての完成度より政治的な効用が優先された。明治23年(1890年)の帝国議会開設とともに役割を終えて急速に衰えたが、戯作の遊戯性から離れて小説に社会的な主題を持ちこんだこと、翻訳・翻案を通じて西洋の物語の型を取り入れたことにおいて、坪内逍遥『小説神髄』に始まる近代小説の前史をなしている。