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愛ちやんの夢物語(ルイス・キャロル)のあらすじ・登場人物

白兎を追って夢の国へ

  • 幻想
  • 翻訳

ルイス・キャロル 訳者 丸山英観 1910年(明治43年)2月

文字数
64,460字
読了目安
約2時間9分
表記
旧字旧仮名

この作品について

ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』(1865年)を、丸山英観が明治の子ども向けに訳した一冊で、1910年(明治43年)2月に内外出版協会から刊行された。主人公アリスは「愛ちやん」と呼ばれ、姉の膝を枕にうたた寝した少女が、懐中時計を持った白兎を追って穴へ落ちるところから話が始まる。訳者は「はしがき」で荘子の胡蝶の夢を引き、この物語を「滑稽の中自ら教訓あり」というお伽噺として差し出している。原作の章立て十二章をたどりながら、裁判の章を「栗饅頭の裁判」とするなど、品物や言葉遊びを日本の読者になじむ形に置き換えた箇所が多く、旧字旧仮名の語り口とあわせて、明治末の翻訳童話の姿を伝えている。

あらすじ

夏の日、土手で姉の読む本をのぞいても絵も会話もなく退屈していた愛ちやんの前を、チョッキのポケットから時計を取り出す白兎が駆けていく。後を追って兎の穴へ飛び込んだ愛ちやんは、深い井戸のような穴をゆっくり落ちて、小さな扉のある広間にたどり着く。瓶の飲み物や菓子を口にするたびに、愛ちやんの体は望遠鏡のように伸びたり縮んだりし、泣いて流した涙の池では鼠や鳥たちと泳ぐはめになる。白兎の家では大きくなりすぎて身動きがとれず、蜥蜴の甚公を煙突から追い払う騒ぎを起こす。茸の上で煙管をくわえた芋蟲に「お前何者だ」と問われ、公爵夫人の台所では胡椒だらけの中で赤子を預かるが、その子は腕の中で豚に変わってしまう。にやにや笑う猫に道を教わって、帽子屋と三月兎がいつまでも終わらない茶会を開いているところへ加わり、さらに女王樣の庭では紅鶴を槌に、針鼠を毬にした奇妙な毬投げに巻き込まれる。女王は何かといえば「首を斬れ」と叫ぶ。グリフォンに連れられて海龜の身の上話と蝦の舞踏の歌を聞いたのち、愛ちやんは、心臓の王樣と女王樣が開く、栗饅頭が盗まれた事件の裁判に立ち会う。証人として呼ばれた愛ちやんは、すっかり元の大きさに戻りながら、王や女王の筋の通らない裁きに「お前は骨牌の一組に過ぎないではないか!」と言い放つ。その途端、骨牌の一組がいっせいに空へ舞い上がって降りかかり、愛ちやんは姉の膝の上で目を覚ます。姉は顔に散りかかる木の葉を払っていて、すべては長い眠りのあいだの夢だった。愛ちやんの話を聞いた姉は、目を閉じて妹の見た不思議の世界を思い描き、この子が大人になっても無邪気な心を失わず、いつか子どもたちにこの夢を語って聞かせることを願う。

登場人物

冒頭部(原文より)

第一章  兎の穴へ  愛ちやんは、姊さんと堤の上にも坐り勞れ、その上、爲ることはなし、所在なさに堪へ切れず、再三姊さんの讀んでる書物を覘いて見ましたが、繪もなければ會話もありませんでした。愛ちやんは、『繪もなければ會話もない書物が何の役に立つだらうか?』と思ひました。

「愛ちやんの夢物語」ルイス・キャロル(青空文庫)

末尾部(原文より)

 乃で姊さんは目を瞑つて坐りました、而して些や不思議な世界のあることを信じました、ところで、再び眼を開けば、總てが塵の浮世に變るに相違ないとは知りつゝも――草は只風にサラ/\と鳴り、池は葦の戰ぎに美しい小波が立ちました――ガラ/\鳴る茶碗はチリン/\と響く鈴に、女王樣の金切聲は牧童の聲と變じました――而して赤兒の嚏、グリフォンの鋭い聲、其他不思議な聲々は、喧しき田畑の人聲と(愛ちやんの知つてる)變じました、――遠方に聞ゆる家畜の唸り聲は、海龜の重々しき歔欷であつたのです。  最後に姊さんは、これが全く妹の見た夢に同じだと云ふことを思ひ、自分が大人になつた時(斯無邪氣な心の少しでも殘つて居たいものだと願ひました。而うして他の小さな子供等を集めて、これらの不思議な世界の夢の面白い話しをしたなら、自分の過ぎ來し夏の日の想出の如何ばかり、多くの子供を喜ばすことだらうかと思ひ、一方ならず愉快を感じました。

「愛ちやんの夢物語」ルイス・キャロル(青空文庫)

名文

むかし、支那の莊周といふ人は、夢に胡蝶と化つたと云ふ話しがありますが、夢なればこそ、漫々たる大海原を徒渉りすることも出來ます、空飛ぶ鳥の眞似も出來ます。世に夢ほど面白いものはありません。

明治四十二年の訳者はしがき。荘周の蝶の夢になぞらえ、夢の自由さと面白さを語って、この「お伽噺」の訳を紹介する。

突然可愛い眼をした白兎が、その傍に驅け寄つて來ました。

『不思議の国のアリス』の邦訳(愛ちやん)で、物語の入口となる白兎の登場。この兎を追って、愛ちやんは兎の穴へ落ちていく。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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