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ファウスト(ゲーテ)のあらすじ・登場人物

永遠に女性なるもの

  • 幻想
  • 翻訳

ゲーテ 訳者 森鴎外 1913年(大正2年)1月 「書き下ろし」

文字数
258,064字
読了目安
約8時間36分
表記
新字新仮名

この作品について

森鴎外によるゲーテ「ファウスト」の完訳。大正2年(1913年)に冨山房から第一部・第二部が刊行され、この畢生の大作を日本語で通して読めるようにした最初の仕事となった。原詩の韻律を口語の韻文に移し、悪魔の軽口から天上の合唱までを訳し分けた文体は、以後の翻訳劇の言葉づかいに大きな影響を与えている。「永遠に女性なるもの、我等を引きて往かしむ」という結びの一句は、鴎外の訳語のまま日本語に定着した。

あらすじ

天上の序曲で、神とメフィストフェレスが賭けをする。学者ファウストを迷わせてみせようという悪魔に対し、神は「善き人は暗い衝動のうちにあっても正しい道を忘れぬ」と応じる。地上では老学者ファウストが、狭いゴシック風の書斎で自らを嘲っていた。哲学も法学も医学も神学も究めたのに、何ひとつ知り得ないと悟るばかりだ——絶望のあまり毒杯を手に取ったところへ、復活祭の鐘と合唱が鳴りわたって彼を引き戻す。やがて黒犬の姿で現れたメフィストフェレスと、ファウストは契約を結ぶ。この世で自分に仕えよ、もし「時よ止まれ、お前は美しい」と口にしたなら、そのとき自分の魂を渡そう、と。若返ったファウストは町の乙女グレエトヘンと出会い、恋におちる。だがその恋は、母の死、兄ヷレンチンの決闘死、そして嬰児殺しの罪による彼女の投獄へと転がり落ちてゆく。牢の扉を開けて逃亡をうながすファウストを、グレエトヘンは拒み、神の裁きに身をゆだねる。第二部でファウストの舞台は個人の恋から世界へと広がる。皇帝の宮廷での紙幣の発明、古代ギリシアへの遡行、絶世の美女ヘレナとの結婚と、その子オイフォリオンの墜死。老いたファウストは最後に海を干拓し、自由な民の住む土地を築こうと志す。憂いの女に目を奪われ盲いてなお、鋤の音を人々の労働の響きと信じた彼は、ついにあの言葉を口にして倒れる。賭けに勝ったはずのメフィストフェレスが魂を捕えようとするその瞬間、天使たちが薔薇を降らせてファウストの不滅のものを運び去る。天上界では、かつてグレエトヘンと呼ばれた贖罪の女が彼を導き、深秘の合唱がうたう。「一切の無常なるものは/ただ影像たるに過ぎず。……永遠に女性なるもの、我等を引きて往かしむ」。

登場人物

冒頭部(原文より)

 夜  狭き、ゴチック式の室の、高き円天井の下に、ファウストは不安なる態度にて、卓を前にし、椅子に坐してゐる。     ファウスト はてさて、己は哲学も 法学も医学も あらずもがなの神学も 熱心に勉強して、底の底まで研究した。 そうしてここにこうしている。気の毒な、馬鹿な己だな。 そのくせなんにもしなかった昔より、ちっともえらくはなっていない。 マギステルでござるの、ドクトルでござるのと学位倒れで、 もう彼此十年が間、 弔り上げたり、引き卸したり、竪横十文字に、 学生どもの鼻柱を撮まんで引き廻している。 そして己達に何も知れるものでないと、己は見ているのだ。

「ファウスト」ゲーテ(青空文庫)

末尾部(原文より)

    合唱する深秘の群 一切の無常なるものは ただ影像たるに過ぎず。 かつて及ばざりし所のもの、 こゝには既に行はれたり。 名状すべからざる所のもの、 こゝには既に遂げられたり。 永遠に女性なるもの、 我等を引きて往かしむ。

「ファウスト」ゲーテ(青空文庫)

名文

なんでも白紙の上に黒い字で書いて置いたものは、 安心して内へ持って帰ることが出来ますから。

学者に扮したメフィストフェレスに、学生が講義の筆記について言う台詞。書き留めたものなら安心だという「白紙に黒字」の言い回しは、原文のドイツ語でも慣用句として広く使われている。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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