恋衣(与謝野晶子)のあらすじ・登場人物
三人の女性歌人の合著
- 文字数
- 11,933字
- 読了目安
- 約24分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
山川登美子、増田雅子、与謝野晶子の三人による合同歌集。1905年(明治38)1月刊行。晶子の「君死にたまふことなかれ」を収め、明星派の女性歌人たちの代表作が一冊に集められた。薄田泣菫に捧げられ、巻頭には絵画目次と詩目次が置かれる。
あらすじ
本の構成は、山川登美子の「白百合」、増田雅子の「みをつくし」、晶子の「曙染」などの章に分かれる。登美子の章は「髪ながき少女とうまれしろ百合に額は伏せつつ君をこそ思へ」「聖壇にこのうらわかき犠を見よしばしは燭を百にもまさむ」など、清らかで内省的な恋の歌が並ぶ。晶子の章には「君死に給ふこと勿れ」「恋ふるとて」など、新体詩も収められる。巻末の詩「冥府のくら戸は」は、恋人よ抱き寄せよと呼びかけ、わが胸を焦がす恋の息を歌う。三人の個性の違いが読み比べられる一冊である。
冒頭部(原文より)
詩人薄田泣菫の君に捧げまつる 絵画目次 詩目次 白百合 みをつくし 曙染 君死に給ふこと勿れ 恋ふるとて
「恋衣」与謝野晶子(青空文庫)
末尾部(原文より)
よみのくら戸はひらかれて 恋びとよよといだきよれ、 かの天に住む八百星は かたみに目路をなげかはせ、 土にかくれし石屑は 皆よりあひて玉と凝れ、 わが胸こがす恋の息 今つく熱きひと息に。
「恋衣」与謝野晶子(青空文庫)
名文
あゝをとうとよ、君を泣く、 君死にたまふことなかれ、 末に生れし君なれば 親のなさけはまさりしも、 親は刃をにぎらせて 人を殺せとをしへしや、 人を殺して死ねよとて 二十四までをそだてしや。
日露戦争に出征した弟を思って詠んだ与謝野晶子の長詩の冒頭。1904年に雑誌『明星』に発表され、戦争批判として大きな議論を呼んだ。
君死にたまふことなかれ、 すめらみことは、戦ひに おほみづからは出でまさね、 かたみに人の血を流し、 獣の道に死ねよとは、 死ぬるを人のほまれとは、 大みこゝろの深ければ もとよりいかで思されむ。
「すめらみこと」(天皇)は戦場に出ず、人に殺し合いを命じるはずがない——と語る第三連。当時としては大胆な表現が批判も招いた。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。