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産屋物語(与謝野晶子)のあらすじ・登場人物

産屋で書いた命がけの記録

与謝野晶子 1909年(明治42年)3月 「東京二六新聞」

文字数
5,994字
読了目安
約12分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

与謝野晶子が、男の子を産んだ直後の産褥で書いた随筆。出産という命がけの出来事を、男性にはわからない経験として語り、女性の感情を率直に記す。女性の書き手が自身の身体を語る先駆的な文章として読まれる。

あらすじ

雛の節句の晩に男の子を産み、まだ産屋にこもっている私は、医師から筆を執ることも物を読むことも許されていない。ふだん忙しく暮らしているので、こう静かに臥っていると、旅へ出て温泉に入っているような気がして、平生考えもしないことが胸に浮かぶ。お医者には内緒で、少しばかり書きつけてみようと筆者は言う。妊娠の煩いや産の苦痛は、男の人にはわからないだろう。女は恋をするにも命がけだが、産むという命がけの出来事に、男は何の関係もなく、何の役にも立たない。後半では、女性の文学にも触れ、小説家だけでなく詩歌の作者としても、新しい女性が現れることを祈ると結ぶ。

冒頭部(原文より)

 雛の節句の晩に男の子を挙げてまだ産屋に籠っている私は医師から筆執る事も物を読む事も許されておりません。ところで平生忙しく暮しておりますので、こう静かに臥っておりますと何だか独りで旅へ出て呑気に温泉にでも入っておるような気が致しますし、また平生考えもせぬ事が色色と胸に浮びます。お医者には内所で少しばかり書きつけて見ましょう。

「産屋物語」与謝野晶子(青空文庫)

末尾部(原文より)

『古事記』の女詩人や、小野小町、清少納言、和泉式部などの歌った物を見ますと、女が主観の激しい細かな詠歎を残しておりますが、この方には割合に矯飾が行われずに真率に女性の感情が出ております。私は小説家ばかりでなく、詩歌の作者としてもまた新しい婦人の出て来られることを祈っておるのです。 (『東京二六新聞』一九〇九年三月一七―二〇日)

「産屋物語」与謝野晶子(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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