秋田街道(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
夜通し歩く街道の夢
- 文字数
- 1,544字
- 読了目安
- 約3分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 岩手県
この作品について
宮沢賢治の短い散文。盛岡から雫石の方へ、夜通し街道を歩く一行のスケッチ。月見草の野、夜明けの空、葛根田川の河原までが、断片のように連なる。筋らしい筋はなく、月や雲、羽虫の光などを書きとめた、感覚の記録として読める。
あらすじ
夜の街道を、仲間たちと盛岡から雫石の方へ歩いていく。肥料や薪炭の黒く小さな家が点々とし、振り返ると盛岡の電灯が眠そうに揺らぐ。小岩井農場を望む四つ角山で座り、月見草の咲く野原で道を外れて水たまりに踏み込み、月は頭の上にのぼる。やがて空が白み、七つ森の脚もとを過ぎ、長い雫石の宿で犬が吠える。葛根田川の河原では皆いつのまにか眠り、河本さんだけが冷たい水を渡って体操をしている。帰り道、日照り雨が降ってまた晴れ、荷馬車の上に傘を開いて立っていると、持ち主に怒鳴られる。暑さの中でうとうとすると、遠くでかっこうが鳴いていた。
冒頭部(原文より)
どれもみんな肥料や薪炭をやりとりするさびしい家だ。街道のところどころにちらばって黒い小さいさびしい家だ。それももうみな戸を閉めた。 おれはかなしく来た方をふりかへる。盛岡の電燈は微かにゆらいでねむさうにならび只公園のアーク燈だけ高い処でそらぞらしい気焔の波を上げてゐる。どうせ今頃は無鉄砲な羽虫が沢山集ってぶっつかったりよろけたりしてゐるのだ。
「秋田街道」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
虹がたってゐる。虹の脚にも月見草が咲き又こゝらにもそのバタの花。一つぶ二つぶひでりあめがきらめき、去年の堅い褐色のすがれに落ちる。 すっかり晴れて暑くなった。雫石川の石垣は烈しい草のいきれの中にぐらりぐらりとゆらいでゐる。その中でうとうとする。 遠くの楊の中の白雲でくわくこうが啼いた。 「あの鳥はゆふべ一晩なき通しだな。」 「うんうん鳴いてゐた。」誰かが云ってゐる。
「秋田街道」宮沢賢治(青空文庫)
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