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芥川の事ども(菊池寛)のあらすじ・登場人物

親友が語る芥川の最期

菊池寛 1927年(昭和2年)9月 「文藝春秋」

文字数
5,580字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名
種別
随筆
舞台
  • 東京都

この作品について

一九二七年七月の芥川龍之介の自殺から二か月、親友であった菊池寛が「文藝春秋」に書いた追悼文。死因をめぐる憶測を退け、病苦と世俗的な煩わしさが厭世観を実際的なものにしたのだろうと冷静に記す一方で、最後の一か月会わずじまいだったこと、瓢亭の前でちらりと自分を見た芥川の眼の光を、生涯の悔恨の種になるだろうと書きつける。友人としての率直さと、編集者としての世間への申し開きが同居する、芥川の死をめぐる第一級の同時代証言。

あらすじ

芥川の死について、書けそうでいて何も書けない——そう書き出したうえで、菊池はまず死因について語る。世人を納得させるような具体的な原因はなく、芥川自身のいう「ボンヤリした不安」が主因であろう。そこに二、三年来の身体的疲労と神経衰弱、そして煩わしい世俗的苦労が重なった。たとえば「近代日本文芸読本」の一件。凝り性の芥川が百二、三十人もの作品を収めて編んだこの本は売れず、印税も分配して手元にはほとんど残らなかったのに、「あれで儲けて書斎を建てた」という妄説が生じ、不平をこぼす作家まで現れた。気にするなと菊池が繰り返し諭しても、芥川は結局、収録された全作家に十円の商品切手を贈らずにはいられなかった。その潔癖さが菊池には悲しかった。……手記に登場する女人をめぐる憶測は死者への冒涜であり、自分宛の遺書には死別の挨拶しか書かれていないと菊池は明言する。趣味も性質も正反対でありながら十年一度も感情の隔たりを生じなかった交わり。「菊池の速達」で知られた自分が、芥川にだけは一度も速達を出したことがないこと。そして芥川が死の直前、二度も文藝春秋社を訪ね、応接室にぼんやり腰かけていたと後から知ったこと。もっと往来して彼の生活力を刺激していたら、と思っても万事は後の祭りである。菊池は最後に、和漢洋の教養を一身に備えた過渡期日本の代表的作家として芥川を評し、「侏儒の言葉」欄を誌上に存続させると宣言する。

登場人物

冒頭部(原文より)

 芥川の死について、いろいろな事が、書けそうで、そのくせ書き出してみると、何も書けない。  死因については我々にもハッキリしたことは分らない。分らないのではなく結局、世人を首肯させるに足るような具体的な原因はないと言うのが、本当だろう。結局、芥川自身が、言っているように主なる原因は「ボンヤリした不安」であろう。

「芥川の事ども」菊池寛(青空文庫)

末尾部(原文より)

 なお、ちょっと付言しておくが、彼の最近の文章の一節に「何人をも許し、何人よりも許されんことを望む」という一節があった。文壇人およびその他の人で故人に多少とも隔意の人があったならば、故人のこの気持ちを掬んで、この際釈然としてもらいたいと思う。

「芥川の事ども」菊池寛(青空文庫)

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