雨の玉川心中(山崎富栄)のあらすじ・登場人物
先生を愛してしまいました
- 恋愛
- 文字数
- 63,965字
- 読了目安
- 約2時間8分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 東京都
この作品について
太宰治とともに玉川上水に入水した山崎富栄が、出会いから死の直前までを綴った日記。「愛してしまいました。先生を愛してしまいました」の一行で始まり、看護と献身、嫉妬と不安、そして最期の日々が、太宰の最晩年を至近距離から記録している。巻末には二人の連名の遺書が収められる。
あらすじ
昭和二十二年三月二十七日、露店のうどんやで、山崎富栄は太宰治に引き合わされた。「貴族だ」と自分で言うとおりの上品な風采。アブノーマルな作家だと聞かされていたけれど、と書きつけながら、彼女は回を重ねるうちに、その表情と動作のなかから真理の呼び声のようなものを感じるようになってゆく。「先生の思想と共になら『死すとも可なり』という心である」。日記はそこから一年余りにわたって書き継がれる。「斜陽」の口述筆記を手伝い、原稿を清書し、看護し、酒をひかえるよう願い、来客をさばく日々。喀血と発熱、鎮痛剤、そして自分以外の女性たちの影。献身と嫉妬、誇りと不安が入りまじり、「死」の語がしだいに増えてゆく。太宰の言葉が数多く書きとめられているのも本書の特徴で、創作をめぐる断片、聖書の引用、弱さと矜持のあいだで揺れる声が生々しく残された。日記は昭和二十三年六月に途切れる。巻末には、下宿の大家である鶴巻夫妻に宛てた太宰と富栄の連名の遺書が収められている。「永いあいだ、いろいろと身近く親切にして下さいました。忘れません」——太宰の短い一文に続けて、富栄は借りた着物のことや、田舎から父母が上京したときの取りなしを頼み、父と姉と友人の住所を書き添えている。日付は昭和二十三年六月十三日、入水の日である。
登場人物
- 富栄 日記の書き手。三鷹の美容師
- 先生(太宰治) 富栄が敬愛し、ともに死を選んだ作家
冒頭部(原文より)
愛してしまいました。先生を愛してしまいました。 三月二十七日 今野さんの御紹介で御目にかかる。場所は何と露店のうどんやさん。特殊な、まあ、私達からみれは、やっぱり特殊階級にある人である――作家という。流説にアブノーマルな作家だとおききしていたけれど、“知らざるを知らずとせよ”の流法で御一緒に箸をとる。“貴族だ”と御自分で仰言るように上品な風采。
「雨の玉川心中」山崎富栄(青空文庫)
末尾部(原文より)
泣いたり笑ったり、みんな御存知のこと、末までおふたりとも御身大切に、あとのこと御ねがいいたします。誰もおねがい申し上げるかたがございません。あちらこちらから、いろいろなおひとが、みえると思いますが、いつものように、おとりなし下さいまし。 昭和二十三年六月十三日富栄
「雨の玉川心中」山崎富栄(青空文庫)
原文を読む
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