出家物語(坂口安吾)のあらすじ・登場人物
屋台の親爺と手練れの未亡人
- 風刺
- 恋愛
- 文字数
- 13,778字
- 読了目安
- 約28分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
戦後の闇景気で稼ぐ五十歳の屋台のオデン屋・幸吉と、断髪洋装の三十五歳の未亡人キヨ子の駆け引きを描いた風俗喜劇。見合いのあとで主導権を握られる幸吉の狼狽と意地が、威勢のよい江戸っ子口調の会話でユーモラスに語られる。題の「出家」が何を指すかは、結末で明かされる。初出は「オール読物」第3巻第1号(1948年1月)。
あらすじ
叔母さんの世話で、屋台のオデン屋を営む五十歳の幸吉が、断髪洋装の美しい未亡人キヨ子と見合いをする。幸吉は戦災で妻子を亡くし、闇景気で財を成した。キヨ子は戦死した夫を想いながらも、その日のうちに幸吉と契りを結ぶ。以後、キヨ子は結婚を拒み、会う日を気ままに延ばし、金を渡そうとしても受け取らない。幸吉は焦れたあげく、会社に押しかけ、キヨ子を家に連れ帰る。キヨ子の無頓着さとあけすけさに幸吉は呆れるが、荒々しい情慾も湧き、彼女の夫のことを訊ねる。キヨ子は「毎日々々よ」と答え、幸吉は女を軽蔑しきる。幸吉はキヨ子のハンドバッグから手紙を盗み、後で読んでみる。男の手紙には、キヨ子が部長、課長、そして男の三人と関係していたことへの非難が書かれていた。三日後、和服の正装でキヨ子がやって来るが、幸吉は手紙のことを持ち出して罵る。キヨ子は気まずい顔をしたが、無邪気にまた来ると言って帰った。それきり来なかった。後日、叔母さんが来て、キヨ子はお寺の坊さんと一緒になり、寺の門に洋裁の看板を掲げ、お経の稽古をはじめたと告げる。幸吉は腹を立てるかと思いきや、なんとなく心が落ち着き、坊主も自分も変わりはない、あのアマのお経の功徳だと、オデコをたたいて笑った。
登場人物
- 幸吉 戦後の闇景気で稼ぐ五十歳のオデン屋。ビヤ樽のようにふとっている
- キヨ子 三十五歳の未亡人。断髪洋装で美人
- 叔母さん 幸吉に見合いを世話する煙草雑貨屋の婆さん
冒頭部(原文より)
幸吉の叔母さんに煙草雑貨屋を営んでいる婆さんがあって、御近所に三十五の品の良い未亡人がいるから、見合いをしてみなさい、と言う。インテリで美人で、三十ぐらいにしか見えない。会社の事務員をして二人の子供を女手で育てゝいるが、浮いた噂もない。幸吉にはモッタイない人だけれども、あるとき叔母さんに、事務員じゃ暮しが苦しいから、オデン屋の小さい店がもちたい、と言った。それで、ふと気がついて、
「出家物語」坂口安吾(青空文庫)
末尾部(原文より)
未亡人がお経を読み、昼下りに香をたき、畑をたがやし、時折は粋なドドイツを自作して唄うよりも、こっちの方がどれだけシミジミしているか分らない。 「へへ、あのアマが、木魚をたゝいて、おとむらいにお経を読みやがるか」 彼はオデコをたゝいて喜んだが、あのアマのお経の功徳のせいか、変に胸が澄むような気持であった。
「出家物語」坂口安吾(青空文庫)
原文を読む
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