アプリで読む

無料・登録不要

バルタザアル(アナトール・フランス)のあらすじ・登場人物

エチオピアの王とシバの女王

  • 恋愛
  • 翻訳

アナトール・フランス 訳者 芥川龍之介 1914年(大正3年)2月 「新思潮」

文字数
10,985字
読了目安
約22分
表記
新字旧仮名
種別
小説

この作品について

フランスの作家アナトール・フランスの短編集『バルタザール』(1889年)の表題作を、芥川龍之介がジョン・レイン夫人の英訳から訳したもの。東京帝国大学の学生だった芥川が、菊池寛や久米正雄らと1914年(大正3年)2月に始めた第3次『新思潮』に寄せた訳で、小説「老年」より先に誌上に出た初期の仕事にあたる。のちに作品集『鼻』(1918年)にも収められた。主人公は、色は黒いが素直で大様な心をもつエチオピアの若い王バルタザアル。シバの女王バルキスを訪ねる旅から始まる物語を、皮肉とユーモアをきかせた会話で運んでいく。

あらすじ

エチオピアの若い王バルタザアルは、魔法師セムボビチスと宦官メンケラを連れ、駱駝の隊を率いてシバの女王バルキスを訪ねる。女王の美しさに心を奪われた王は、怖ろしさというものを知りたいとせがむ女王に請われ、その夜、二人で身をやつして市へ出る。居酒屋で勘定をめぐる乱闘となり、王は女王をかばって大鍋の一撃を受けながらも暴漢を退け、逃げのびた二人は涸れた河床の苔の上で一夜を過ごす。翌朝、二人は盗賊に捕らえられ、王は盗賊の頭にナイフで刺されて倒れる。女王の護衛兵に救われた王は半月のあいだ意識を失い、ようやく目覚めて女王のもとへ駆けつけるが、女王はコマギイナの王と親しくしており、あの夜のことは酒の見せた夢だろうとそっけなく言い放つ。傷心の王はエチオピアに帰り、高い塔を建ててセムボビチスから天文と魔術を学び、学問の中でバルキスを忘れようとする。やがて王は、空に生きているような美しい新しい星を見つける。王がもう自分を愛していないと聞いた女王は、腹立ちと恋しさから大勢の供を連れてエチオピアへやって来るが、そのとき星が王に語りかけ、没薬を携えて、厩で生まれようとしている幼な児のもとへ自分に従うよう告げる。神の愛に満たされた王の心に自分の入る余地がないのを知った女王は、怒ってシバへ引き返す。王は星に導かれて旅立ち、途中で黄金を携えたガスパアと乳香を携えたメルキオルの二人の王と出会い、三人そろって幼な児とその母マリヤのもとに至り、贈り物を捧げて礼拝する。

登場人物

冒頭部(原文より)

 其頃はギリシヤ人にサラシンとよばれたバルタザアルがエチオピアを治めてゐた。バルタザアルは色こそ黒いが、目鼻立の整つた男であつた。其上又素直なたましひと大様な心とを持つた男であつた。  即位の第三年行年二十二の時に王は国を出て、シバの女王バルキス聘問の途に上つた。  追随するのは魔法師のセムボビチスと宦官のメンケラとである。行列の中には七十五頭の駱駝がゐて、それが皆肉桂、没薬、砂金、象牙などを負うてゐるのである。

「バルタザアル」アナトール・フランス(青空文庫)

末尾部(原文より)

『寡人は驕慢に克つた。寡人の召されたのは其為ぢや』とメルキオルが云つた。 『寡人は虐行に克つた。其故に寡人は卿等と共に行くのだ』とガスパアが云つた。  かくして三人の賢人は共に旅を続けた。東方に見えた星は彼等に先立つて、遂に其小児のゐる所へ来ると、其上に止つた。星の止つてゐるのを見て、彼等は我を忘れて喜んだのである。  家の中に入ると、彼等は小児が母のマリヤと共にゐるのを見た。そこで身をひれ伏して、彼等は其幼な児を礼拝した。それから其財宝をひらいて、金と乳香と没薬とを捧げたのは、福音書に書いてある通りである。

「バルタザアル」アナトール・フランス(青空文庫)

名文

其頃はギリシヤ人にサラシンとよばれたバルタザアルがエチオピアを治めてゐた。

アナトール・フランス『バルタザアル』の冒頭。のちの東方三博士の一人とされるエチオピアの王が、シバの女王のもとへ旅立つまでを描く。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

近い作品