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水車のある教会(オー・ヘンリー)のあらすじ・登場人物

失った娘と水車の歌

  • 恋愛
  • 翻訳

オー・ヘンリー 訳者 三宅幾三郎 1929年(昭和4年)7月

文字数
11,839字
読了目安
約24分
表記
旧字旧仮名
種別
小説

この作品について

アメリカの短編作家オー・ヘンリーが山あいの避暑地を舞台に描いた「水車のある教会」を、三宅幾三郎が訳したもの。新潮社『世界文學全集36 近代短篇小説集』(1929年)所収。幼い娘を失った製粉場の主人と、身寄りのない一人の娘との出会いを、あたたかなユーモアを交えて描く。底本は旧字旧仮名。

あらすじ

レイクランヅは、湖など無いのに湖の名を持つ、鉄道沿いの静かな山あいの村である。その近くに古びた宿イーグル・ハウスがあり、さらに少し行くと、「世界唯一の水車のかかった教会」と呼ばれる、元は水車小屋だった建物がある。毎年初秋になると、白髪の老人エイブラム・ストロングがこの宿に逗留し、客たちから「エイブラム師」と慕われている。彼はかつてこの水車小屋の主人で、四つになる一人娘のアグレイアを、ある日突然の失踪で失った。夫婦は二年近く捜しつづけたすえ、北西部へ移って製粉業で成功し、水車小屋を教会に改め、「アグレイア」印の小麦粉を災害の被災地へ無料で送りつづけている。ある年の九月、アトランタの百貨店で働く娘ロウズ・チエスタが、初めての休暇でイーグル・ハウスにやって来る。身寄りのない彼女は、結婚を申し込んでくれた青年ラルフに、自分の素性を恥じて返事ができずにいた。エイブラム師はこの娘と仲よくなり、彼女の悩みを聞いてやる。ある日の夕暮れ、二人が古い水車教会に居合わせたとき、オルガンの低い響きが二階に積んだ麦粉の袋から粉を降らせ、エイブラムは昔の粉挽き歌を口ずさむ。すると娘が、夢の中から呼び返されたように言った。「とうちゃん、ダムズをお家へ連れてって!」

登場人物

冒頭部(原文より)

 レイクランヅはハイカラな避暑地の目録には入つてゐない。クリンチ川の小さな支流に臨むカンバランド山脈の低い支脈の上に在る。もと/\レイクランヅといふのは、寂しい狹軌鐵道沿線の、二十數戸の靜かな村の名である。まるで、鐵道が松林の中で道に迷つて、怖く淋しくなつて、その村へ逃げ込んだやうにも見え、又村の方が道を失つて、汽車に故郷へ連れて歸つて貰ひ度さに、線路のふちに固まり合つてゐるといつた風にも見える。  それに、レイクランヅといふ村の名も變だ。湖水なんか無いんだから、そのほか、附近には取立てゝ云ふ程の物もない平凡なところだ。  村から半哩ばかりのところに、イーグル・ハウスといふ大きな廣い建物がある。

「水車のある教会」オー・ヘンリー(青空文庫)

末尾部(原文より)

製粉場主は言つた。「さうだね、それは程度問題だね。お前がお月樣なんぞのやうなものを買つてくれとさへ言はなければ、まあ澤山お金があるといつてよからうね。」 「アトランタへ電報を打つのは、隨分お金がかゝるでせうか?」これまでつましく暮らして來たアグレイアが訊いた。 「あゝ、さうか。」父は輕い溜息をつきながら言つた。「ラルフに來るやうに言つて遣りたいんだね。」  アグレイアは父を見上げて、靜かに微笑んだ。 「あたし、彼に待つてくれるやうに言ひ度いんです。」彼女は言つた。「あたしやつとお父さんを見つけたばかりですもの。だから、少時お父さんと二人きりでゐたいの。待つて貰ひ度いと言つてやりますわ。」

「水車のある教会」オー・ヘンリー(青空文庫)

名文

レイクランヅはハイカラな避暑地の目録には入つてゐない。

O・ヘンリー「水車のある教会」の書き出し。鉄道が松林で迷子になったような、小さな村・レイクランヅの描写で物語が始まる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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