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鴉と正覚坊(若山牧水)のあらすじ・登場人物

浜の亀と一羽の鴉

若山牧水 

文字数
3,866字
読了目安
約8分
表記
旧字旧仮名
種別
随筆
舞台
  • 静岡県

この作品について

若山牧水が、住まいの近くの浜で出会った出来事を綴った随筆。漁師の子供たちが「亀があがった」と騒ぐのを見て、赤海亀の「正覚坊」の話になる。浜の松の蔭に来る鴉との暮らしも描かれる。

あらすじ

晩酌前の散歩に、庭続きの浜の松原へ出かけると、松原を縦に貫く静かな小径がある。そこで三人連れの漁師の子供に出会い、一人が行き違いざまに両手を広げて「亀があがったよ、斯んなにでっけえ亀が」と言う。あとの二人も同じように言い、村へ知らせに行くのか息をはずませている。筆者はその「正覚坊」と呼ばれる大きな海亀の話に興味を引かれる。後半では、浜に来る一羽の鴉との、ひそかな交流が語られる。ある日、考えごとをしながら一人浜に出て、松の蔭の休み場にいると、松の皮がしきりに落ちてきて、その鴉が来ている。何かを言いかけたい気になる。

冒頭部(原文より)

   正覺坊  いつもより少し時間は遲かつたが、晩酌前の散歩をして來ようと庭つゞきの濱の松原へ出かけて行つた。其處には松原を縱に貫いて通じてゐる靜かな小徑があり、朝夕私の散歩徑となつてゐる。一二町も歩いたところで、濱から上つてその小徑を切る小徑がある。其處で三人連の漁師の子供に出會つた。いづれも十歳ばかりの見知らぬ子供たちであるが、なかの一人が行きちがひさまに矢庭に私に向つて兩手をひろげて、

「鴉と正覚坊」若山牧水(青空文庫)

末尾部(原文より)

 今日である。少し考へごとをしながら私は一人濱に出た。そして例の松の蔭の休み場に休んでゐた。松の皮が頻りと落ちて來る。ぢいつと眼を擧げると、これも今日は一羽、例の鴉が其處に來てゐる。啼きもしない。 『此奴、親爺まで犬と一緒にしてゐる』  と苦笑されたが、われ知らず何か言ひかけたい氣にもなつた。

「鴉と正覚坊」若山牧水(青空文庫)

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