水郷めぐり(若山牧水)のあらすじ・登場人物
舟で巡る香取鹿島の水郷
- 文字数
- 2,798字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 茨城県
- 千葉県
この作品について
若山牧水が、友人の細野君と、利根川下流から霞ヶ浦・北浦の水郷を舟で巡った旅の記。夜汽車で出かけ、舟に揺られて香取・鹿島を訪ね、旅の歌を連ねる。
あらすじ
約束したようなしないような六月二十五日に、千葉県の人である細野君が誘いに来た。いつか一緒に香取鹿島から霞ヶ浦あたりの水郷を回ろうという話になっていたのである。その日は、自分で出している雑誌の七月号の編集が遅れていたが、思い切って出かけることにして、徹夜で仕事を片付ける。翌日午後三時過ぎ、上野発四時十八分の汽車で立つ。水郷では舟に乗り、鹿島の宮の鳥居、浪逆の浦の雨、宿屋の灯に集まる虫など、旅先の景が歌に詠まれる。「鹿島香取宮の鳥居は湖越しの水にひたりて相向ひたり」など、記の終わりに歌が並ぶ。
冒頭部(原文より)
約束した樣なせぬ樣な六月廿五日に、細野君が誘ひにやつて來た。同君は千葉縣の人、いつか一緒に香取鹿島から霞ヶ浦あたりの水郷を廻らうといふ事になつてゐたのである。その日私は自分の出してゐる雜誌の七月號を遲れて編輯してゐた。何とも忙しい時ではあつたが、それだけに何處かへ出かけ度い欲望も盛んに燃えてゐたので思ひ切つて出懸くる事にした。でその夜徹夜してやりかけの爲事を片附け、翌日立つ事に約束した。一度宿屋へ引返した細野君はかつきり翌廿六日の午前九時に訪ねて來た。が、まだ爲事が終つてゐなかつた。更に午後二時までの猶豫を乞ひ大速力で事を濟ませ、三時過ぎ上野着、四時十八分發の汽車で同驛を立つた。
「水郷めぐり」若山牧水(青空文庫)
末尾部(原文より)
沼とざす眞闇ゆ蟲のまひ寄りて集ふ宿屋の灯に遠く居る をみなたち群れて物洗ふ水際に鹿島の宮の鳥居古りたり 鹿島香取宮の鳥居は湖越しの水にひたりて相向ひたり 苫蔭にひそみつゝ見る雨の日の浪逆の浦はかき煙らへり 雨けぶる浦をはるけみひとつゆくこれの小舟に寄る浪聞ゆ
「水郷めぐり」若山牧水(青空文庫)
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