白骨温泉(若山牧水)のあらすじ・登場人物
雪に埋もれる山の湯
- 文字数
- 3,000字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
- 舞台
- 長野県
この作品について
若山牧水が信州の白骨温泉を紹介した短い随筆。乗鞍岳の北麓、険しい崖下の渓間にある小さな温泉場の様子と、そこへ行く道、秋の終わりに行ってみたい思いが記される。
あらすじ
嶮しい崖下の渓間に宿屋が四軒、蕎麦屋が二軒、煎餅や絵葉書を売る小店が一軒、合わせてわずか七軒の家が狭い所に建っている。郵便局所在地から八里の登りで、配達は往復二日がかり、乗鞍岳の北麓、海抜四、五千尺、春五月から秋十一月までが営業期間で、他の五か月は犬一匹残らず三里下の村へ降り、雪に埋もれてしまう。これが白骨温泉の概略で、胃腸に利くことは日本一という評判である。松本から島々村、稲核村への道筋を示し、筆者は十月半ばから雪のちらつく十一月半ばごろ、ウイスキーと缶詰をたくさん用意して、世離れした湯に浸っていたいと願う。
冒頭部(原文より)
嶮しい崖下の渓間に、宿屋が四軒、蕎麦屋が二軒、煎餅や絵葉書などを売る小店が一軒、都合唯だ七軒の家が一握りの狭い処に建って、そして郵便局所在地から八里の登りでその配達は往復二日がかり、乗鞍岳の北麓に当り、海抜四五千尺(?)春五月から秋十一月までが開業期間でその他の五個月は犬一疋残る事なく、それより三里下の村里に降って、あとはただ全く雪に埋れてしまう、と云えば大抵信州白骨温泉の概念は得られる事と思う。そして胃腸に利く事は恐らく日本一であろうという評判になっている。
「白骨温泉」若山牧水(青空文庫)
末尾部(原文より)
私は時間の都合さえつけば今年の秋も登って行き度いものと思っている。夏がいい、夏ならば東京からも相当に客が来るのでお話相手もあろうから、と宿の者は繰返して云っていたが、それよりも寧ろ芋を洗う様な伊那節を聞く方が白骨らしいかも知れぬ。それに一時はアルプスの登山客で大変だそうだ。私の考えているのは、それらの何にもが影を消すであろう十月の半ばから雪のちらちらやって来る十一月の半ば頃まで、ぽっちりとその世ばなれのした湯の中へ浸っていたいということだ。無論、ウイスキーに何か二三種のよき鑵詰などどっさり用意してだ。其処から四里にして上高地、六里にして飛騨の平湯がある。共に焼岳をめぐった、雪の中の温泉である。
「白骨温泉」若山牧水(青空文庫)
原文を読む
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