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亡霊怪猫屋敷(橘外男)のあらすじ・登場人物

この婆アの正体をお知りになったら

  • 怪奇

橘外男 1951年(昭和26年)8月 「少女の友」

文字数
106,619字
読了目安
約3時間33分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 長崎県

この作品について

1951年(昭和26年)から翌年にかけて「少女の友」に連載された橘外男の怪奇長編。舞台は九州の西のはずれ、大村の城下町に残る古い侍屋敷である。しぐれの降る秋の夕暮れ、久住医院の門に、赤ん坊を背負った奇怪な老婆が足音もなく立った。猛犬の五郎丸だけが狂ったように吠えたてる。やがて屋敷にまつわる猫の怨念と、人の一念が生み出す怪異が、次々に明らかになってゆく。のちに映画化もされ、日本の怪猫ものを代表する一編として知られる。

あらすじ

九州の西のはずれ、大村の城下町。おもだった藩士の屋敷跡が並ぶ侍小路は、老木に暗く覆われ、昼でも狐の鳴きそうなさびしい場所である。その一角、冠木門にさざんかの咲きこぼれる屋敷が、久住医院だった。しぐれの降る秋の夕暮れ、飼犬の五郎丸が坂下の闇に向かって異様な唸り声をあげはじめる。小馬ほどもある土佐犬で、ふだんは患者に吠えついたことのない利口な犬だ。やがて門の中に、赤ん坊を背負って単衣一枚の老婆が、足音ひとつたてずに浮かび上がった。底光りのする目で犬を睨みつけるその形相は、およそ人間のものとは思われない。看護婦や車夫が飛び出してくると、老婆はハッとしたようにおだやかな顔になり、傘で犬を追いはらう。ひきずられてゆく五郎丸が口をきけたなら、この婆の正体を知ったら仰天しますよと言っただろう——。この夜を境に、久住家には人智の及ばぬ怪異が起こりはじめる。

登場人物

冒頭部(原文より)

怪しき老婆  この物語は、昨年の秋の末、九州のごく西のはずれの大村という城下町の、その侍小路のふるい屋敷町におこったできごとです。  だいたいこのあたりは、そのむかし、おもだった藩士たちの屋敷跡で、むかしは裃に両刀をたばさんだ、登城すがたの侍たちの往来でにぎわっていたのでしょう。

「亡霊怪猫屋敷」橘外男(青空文庫)

末尾部(原文より)

「従妹が離れ座敷へはいっていたあいだに、天井がおちたり壁がくずれたのならば、なぜその物音があなたにはきこえなかったのだろう?」  と、わたくしがなじりましたところ、 「いいえじぶんは三十分ちかくも、奥さまがでておいでになるのをお部屋のそとでお待ちしていましたが、けっしてけっしてそのとき物音などは、カタともドンともきこえませんでした」  と、女中のおもとは涙にむせびながら、いくたびもいくたびも頭をふってこたえておりました。

「亡霊怪猫屋敷」橘外男(青空文庫)

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