影男(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
影に生きる異常犯罪者
- ミステリ
- 怪奇
- 文字数
- 154,158字
- 読了目安
- 約5時間8分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1955年(昭和30年)、「面白倶楽部」に連載した長編。「影男」と呼ばれる異常な男——世の裏側を影のように動きまわり、他人の秘密をのぞき見て暮らす犯罪者を主人公に据えた、乱歩後期の作品である。委託殺人という恐るべき裏稼業や、猟奇と犯罪の世界が、乱歩ならではの妖しい筆致で描かれる。名探偵の活躍する物語とはひと味違う、悪の側から覗いた犯罪絵巻である。
あらすじ
「影男」——それは、世の裏側を影のように動きまわり、他人の秘密をひそかに覗き見ることに、異常な喜びを見いだす男である。ホテルの支配人室に踏みこむ場面から幕を開けるこの物語は、影男が関わっていく、猟奇と犯罪の暗い世界を描き出していく。やがて明らかになるのは、金で殺人を請け負う「委託殺人」という、身の毛もよだつ裏稼業の存在だった。二十数名もの委託殺人に手を染めた恐るべき犯罪組織——その中心にいた者たちが、いかにして破滅へと転がり落ちていくか。物語の終幕、三人の異常犯罪者を乗せた護送のバスは、警視庁の赤レンガの見えるお堀端へと近づいていく。絞首台の幻を心に描く者、それ以上を考えまいとする者——「希代の異常犯罪者三人三様の思い」をのせて。名探偵の推理劇とは趣を異にし、悪と犯罪の側から人間の闇を覗きこんだ、乱歩後期の異色長編である。
登場人物
- 影男 世の裏を影のように生きる異常犯罪者
冒頭部(原文より)
三十二、三歳に見えるやせ型の男が、張ホテルの玄関をはいって、カウンターのうしろの支配人室へ踏みこんでいった。 ずんぐりと背が低くて丸々と太ったちょびひげの支配人がデスクに向かって帳簿をいじくっていた。そばの灰ざらにのせた半分ほどになった葉巻きから、細い紫色の煙がほとんどまっすぐに立ちのぼっていた。
「影男」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
三人の犯罪者は、殺風景な留置室を頭に描いていた。それから刑務所の光景が浮かんできた。影男とちょびひげはそれ以上のことは考えなかったが、小男の須原だけは、絞首台を幻想していた。 希代の異常犯罪者三人三様の思いをのせて、バスはもう、警視庁の赤レンガの見えるお堀端にさしかかっていた。
「影男」江戸川乱歩(青空文庫)
原文を読む
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