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フランケンシュタイン(メアリー・シェリー)のあらすじ・登場人物

造られた者は、愛を求めた

  • 怪奇
  • SF
  • 翻訳

メアリー・シェリー 訳者 宍戸儀一 1953年(昭和28年)8月

文字数
193,468字
読了目安
約6時間27分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

イギリスの作家メアリー・シェリーが十代の終わりに書き上げ、1818年に匿名で出版した長編小説(原題 Frankenstein, or The Modern Prometheus)を、宍戸儀一が訳したもの。若い科学者が死者の材料から生命を造りだし、その醜さに恐れて見捨てたことから、名もない「怪物」との果てしない愛憎がはじまる。北極をめざす探検家の手紙、科学者の告白、怪物自身の語りを入れ子に重ね、造った者と造られた者の孤独を描きだした。「SFの起源」とも呼ばれ、映画で広まった怪物像とは違う、言葉を学び愛を求めて拒まれる怪物の姿に原作ならではの読みどころがある。

あらすじ

北極をめざす探検家ウォルトンは、イギリスの姉に宛てて航海の手紙を書き送っている。船が氷に閉ざされたある日、犬橇で北へ去る巨大な人影を見た翌朝、一行は氷の上で衰弱しきった男を救いあげる。男の名はヴィクトル・フランケンシュタイン。彼はウォルトンに自らの身の上を語りはじめる。ジュネーヴの名家に生まれ、養女のエリザベートと兄妹のように育ったヴィクトルは、十七歳でインゴルシュタットの大学に進み、生命の原理の探究にのめりこむ。墓場や解剖室から材料を集めて巨大な人体を組みあげ、十一月のものさびしい夜、ついにそれに生命の火花をともす。だが目を開いたその姿のあまりの醜さに恐れをなし、彼は造ったものを置き去りにして逃げ出してしまう。やがて故郷で幼い弟ウィリアムが殺され、無実の女中ジュスチーヌが犯人として処刑される。真犯人があの怪物だと悟ったヴィクトルの前に、アルプスの氷河の上で当の怪物が現れ、これまでの日々を語る。人に忌み嫌われてさまよった怪物は、ド・ラセー老人一家の小屋に隠れ住み、壁ごしに言葉と書物を学んで、一家にひそかな親しみを寄せていた。しかし思いきって姿を見せると打ちすえられて追われ、溺れかけた娘を救っても銃で撃たれる。孤独と憎しみに駆られた怪物は、自分と同じ伴侶を造ってくれれば人里を離れて二度と姿を見せないと迫る。ヴィクトルは一度は承知し、親友クレルヴァルとイギリスへ渡ってオークニーの孤島で女の怪物の製作にかかるが、新たな種族が生まれることを恐れ、完成を前にそれを打ち壊してしまう。「おまえの結婚の夜には行くからな」——怪物の予告どおり、クレルヴァルが殺され、エリザベートは婚礼の夜に命を奪われ、父も悲嘆のうちに世を去る。すべてを失ったヴィクトルは、復讐のため怪物を追って北の果てまで来たのだった。語り終えた彼はウォルトンの船の上で息を引き取る。その夜、遺骸の前に現れた怪物は、創り主への愛憎と自らへの嫌悪を吐き出し、北の果てでこの体を焼きつくすと告げて、氷の筏に乗って闇のなかへ消えていく。

登場人物

冒頭部(原文より)

ウォルトンの手紙(第一) イングランドなるサヴィル夫人に セント・ペテルスブルグで、一七××年十二月十一日  虫の知らせがわるいからとあんなに御心配くださった僕の計画も、さいさきよくすべりだした、とお聞きになったら、お喜びくださることとぞんじます。昨日、ここに着きました。で、まずとりあえず、無事でいること、事かうまく運ぶことにますます自信を得たことをお知らせして、姉さんに安心していただきます。  僕はもう、ロンドンのずっとずっと北に居るのです。そして、ペテルスブルグの街を歩きながら、頬をなぶるつめたい北方の微風を感じているところですが、それは僕の神経をひきしめ、僕の胸を歓びでいっぱいにします。

「フランケンシュタイン」メアリー・シェリー(青空文庫)

末尾部(原文より)

「しかし、すぐに」と悲しげに、また厳粛に、熱情をこらえかねて、怪物は叫んだ、「おれは死んで、いまこうして感じていることももう感じなくなるのだ。まもなく、この火の出そうな苦しみも消えるだろう。おれは、火葬の薪の山に意気揚々と登り、苦痛の焔にもだえて勝ち誇るのだ。燃えさかるその火の光も消え去り、おれの灰は風のために海へ吹き飛ばされるだろう。おれの霊は安らかに眠り、それが考えるとしても、きっとこんなふうには考えないだろう。では、さようなら。」  怪物はこう言いながら、船室の窓から、船の近くにあった氷の筏に跳び下りました。それはまもなく、浪に流されて暗やみのなかを遠くへ消えていったのです。

「フランケンシュタイン」メアリー・シェリー(青空文庫)

名文

もう午前の一時で、雨が陰気に窓ガラスをぽとぽと打ち、蝋燭はほとんど燃え尽きていたが、そのとき、冷えかけた薄暗い光で、その造られたものの鈍い黄いろの眼が開くのが見えた。それは荒々しく呼吸し、手足をひきつるように動かした。

十一月の陰鬱な夜、フランケンシュタインが造り上げたものに命が宿る瞬間。雨音と燃え尽きかけた蝋燭が、創造の場面を怪奇な色に染める。

おぼえておいてください。わたしは、あんたに造られたもので、あんたのアダムというところなのだが、どちらかというと、悪いこともしないのに悦びを奪われた堕天使ですよ。いたるところで無上の喜びを眼にするのに、わたしだけがどうにもならぬようにそれから閉め出されるのだ。わたしは情深くて善良だったが、不幸がわたしを鬼にしたのだ。

山で創造主と再会した怪物の訴え。『失楽園』になぞらえ、自分は善良に生まれたが孤独と不幸が鬼にしたと語る、作品の核心をなす言葉。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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