ウィリアム・ウィルスン(ポー)のあらすじ・登場人物
もう一人の私が追ってくる
- 怪奇
- 翻訳
- 文字数
- 23,682字
- 読了目安
- 約47分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
アメリカの作家エドガー・アラン・ポーが1839年に発表した短編「William Wilson」を、佐々木直次郎が訳した一編(第一書房『エドガア・アラン・ポオ小説全集』所収)。自分と同じ名前、同じ顔を持つ男につきまとわれる主人公を通して、良心というものの恐ろしさを描く、ドッペルゲンガー文学の古典。
あらすじ
語り手は、自分を「ウィリアム・ウィルスン」と名乗ることにする。放埒な性格で知られる家に生まれた彼は、英国の古い町の寄宿学校で、同じ名前、同じ誕生日、そして瓜二つの容姿を持つ少年に出会う。この少年だけは、語り手の気ままな支配に従わず、ささやくような声で忠告をくり返した。語り手はその存在に反発しつつも、どこかで恐れを感じるようになり、学校を去る。その後、イートン校、オックスフォード大学へ進んだ彼は、放蕩と賭博に溺れていく。ところがイカサマで大金を巻き上げようとする席に、もう一人のウィルスンが現れて、彼の悪事を暴いてしまう。逃げ出した先々にも、その男は現れる。ローマの仮面舞踏会の夜、語り手はついに、顔を隠して現れた男と、剣を抜いて向き合う。
登場人物
- 語り手(ウィリアム・ウィルスン) 放埒で傲慢な性格の男
- もう一人のウィルスン 同じ名前、同じ顔の同級生。語り手の悪事のたびに現れる
冒頭部(原文より)
さしあたり、私は自分をウィリアム・ウィルスンという名にしておくことにしよう。わざわざ本名をしるして、いま自分の前にあるきれいなページをよごすほどのことはない。その私の名前は、すでにあまりにわが家門の侮蔑の――恐怖の――嫌悪の対象でありすぎている。怒った風は、その類いなき汚名を、地球のはてまでも吹き伝えているではないか? おお、恥しらずな無頼漢のなかの無頼漢! ――現世にたいしてお前はもう永久に死んでいるのではないか? その名誉にたいして、その栄華にたいして、その燦然たる大望にたいして?
「ウィリアム・ウィルスン」ポー(青空文庫)
末尾部(原文より)
それはウィルスンであった。けれども彼はもうささやきでしゃべりはしなかった。そして私は、彼が次のように言っているあいだ、自分がしゃべっているのだと思うことができたくらいであった。―― 「お前は勝ったのだ。己は降参する。だが、これからさきは、お前も死んだのだ、――この世にたいして、天国にたいして、また希望にたいして死んだんだぞ! 己のなかにお前は生きていたのだ。――そして、己の死で、お前がどんなにまったく自分を殺してしまったかということを、お前自身のものであるこの姿でよく見ろ」
「ウィリアム・ウィルスン」ポー(青空文庫)
原文を読む
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