黄金虫(ポー)のあらすじ・登場人物
暗号が導く海賊の財宝
- ミステリ
- 冒険
- 翻訳
- 文字数
- 39,262字
- 読了目安
- 約1時間19分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
エドガー・アラン・ポーが1843年に発表した「The Gold-Bug」を、佐々木直次郎が訳した一編(第一書房『エドガア・アラン・ポオ小説全集』所収)。南部の孤島で拾った黄金色の甲虫と、羊皮紙にひそむ暗号を手がかりに、零落した紳士ルグランが海賊キッドの埋蔵金の謎に挑む。緻密な暗号解読の面白さで知られ、暗号小説・宝探し小説の古典として名高い、ポーの代表的な短編である。
あらすじ
零落してサリヴァン島に隠棲する南部の紳士ウィリアム・ルグランは、ある日、黄金色に輝く見慣れぬ甲虫を捕らえる。数週間後、彼を訪ねた「私」は、ルグランが黒人の従僕ジュピターを従え、奇妙な熱に取り憑かれているのを見る。ルグランは甲虫を包んだ羊皮紙を火にかざしたとき、そこに髑髏の形と暗号らしい数字の羅列が浮かび上がるのを見つけていた。彼はそれを海賊キャプテン・キッドの埋蔵金の隠し場所を示す暗号と見抜き、文字の出現頻度を手がかりに英語の文章へと解読してゆく。三人は暗号の指示に従い、丘の上の大木の枝から、髑髏の左目を通して黄金虫を糸で吊り下ろし、その落下点を基準に距離と方角を測って地面を掘る。いったんは空振りに終わるが、ジュピターが左右を取り違えていたと気づいて掘り直すと、朽ちた人骨とともに、金貨や宝石で満たされた巨大な財宝の箱が現れる。後日ルグランは「私」に、暗号解読の一部始終と推理の筋道を、順を追って明かしてみせる。
登場人物
- ウィリアム・ルグラン 暗号を解いて財宝を探し当てる零落した紳士
- 私 ルグランを案じて島を訪ねる語り手
- ジュピター ルグランに仕える忠実な従僕
冒頭部(原文より)
もうよほど以前のこと、私はウィリアム・ルグラン君という人と親しくしていた。彼は古いユグノーの一家の子孫で、かつては富裕であったが、うちつづく不運のためすっかり貧窮に陥っていた。その災難に伴う屈辱を避けるために、彼は先祖の代から住み慣れたニュー・オーリアンズの町を去って、南カロライナ州のチャールストンに近いサリヴァン島に住むことになった。
「黄金虫」ポー(青空文庫)
末尾部(原文より)
「それは僕にだって君以上には答えられぬ問題だよ。しかし、あれを説明するのにたった一つだけもっともらしい方法があるようだな。――僕の言うような凶行があったと信ずるのは恐ろしいことだがね。キッドが――もしほんとうにキッドがこの宝を隠したのならだよ。僕はそうと信じて疑わないが――彼がそれを埋めるときに誰かに手伝ってもらったことは明らかだ。だが、その仕事のいちばん厄介なところがすんでしまうと、彼は自分の秘密に関係した者どもをみんな片づけてしまったほうが都合がいいと考えたんだろう。それには、たぶん、手伝人たちが穴のなかでせっせと働いている時に、鶴嘴で二つも食らわせば十分だったろうよ。それとも、一ダースも殴りつけなければならなかったか、――その辺は誰にだってわからんさ」
「黄金虫」ポー(青空文庫)
名文
そう思うんじゃごぜえません、――そうと知ってるんでがす。あの黄金虫に咬まれたんでなけりゃあ、どうしてあんなにしょっちゅう黄金の夢をみてるもんかね?
ルグランの召使いジュピターが、主人の様子を心配して語る言葉。方言まじりの訳で、題名の「黄金虫」が物語に影を落とし始める。
人間の知恵を適切に働かしても解けないような謎を、人間の知恵が組み立てることができるかどうかということは、大いに疑わしいな。
暗号の解き方を語るルグランの言葉。暗号ものの源流とされる本作で、ポーの理知への信頼をよく示す一文として知られる。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
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