グロリア・スコット号(コナン・ドイル)のあらすじ・登場人物
名探偵の最初の事件
- ミステリ
- 翻訳
- 文字数
- 21,501字
- 読了目安
- 約43分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
冬の夜、ホームズが古い書類を取り出し、それを読んだ治安判事が恐怖のあまり死んだという一通の手紙をワトソンに見せる。学生時代のホームズが手がけた「最初の事件」を、本人が回想して語る一篇である。原題は「The Gloria Scott」で、1893年4月に『ストランド・マガジン』に発表され、短編集『シャーロック・ホームズの思い出』に収められた。大学でただ一人の友人だった青年との出会いや、探偵を職業にしようと考えたきっかけが語られ、ホームズの若き日を知る一篇として親しまれている。三上於菟吉の訳で、平凡社「世界探偵小説全集」の一冊(1930年)に収められた。
あらすじ
大学時代、人づきあいの悪かったホームズにも、ヴィクター・トレヴォというただ一人の友人がいた。夏の休暇にノーフォークの彼の実家に招かれたホームズは、治安判事をつとめる父親の経歴を、持ち物や体つきから次々に言い当てる。ところが、腕に消しかけた「J・A」の刺青があることを指摘すると、老人は気を失って倒れてしまう。その直後、ハドソンと名乗るみすぼらしい老水夫が訪ねてきて、老人は彼を雇い入れ、やがてハドソンは家じゅうを我が物顔で振る舞うようになる。休暇の終わりに呼び戻されたホームズは、ハドソンが去ったあと、ハンプシャーのベドウスから届いた一見無意味な手紙を読んで老人が倒れ、息を引き取ったことを知る。ホームズは、手紙は二語おきに読むと「計画はなされたり。ハドソンはすべてを予告せり。逃亡せられよ」という警告になることを解き明かす。老人が遺した告白書によれば、彼の本名はジェームズ・アーミテージといい、若いころ銀行の金を使いこんで流刑となり、囚人船グロリア・スコット号でオーストラリアへ送られる途中、プレンダーガストらの起こした船の乗っ取りに巻きこまれた。殺戮を嫌って仲間のエヴァンス(のちのベドウス)らとボートで船を離れた直後、船は火薬庫の爆発で沈み、ただ一人救い上げたのが若い水夫ハドソンだった。過去を隠して財を成した二人を、ハドソンは三十年後に脅しに来たのだった。ヴィクターは心に傷を負って世間を離れ、茶園を営むようになり、ハドソンとベドウスはそのまま行方をくらました。
登場人物
- シャーロック・ホームズ 学生時代の最初の事件をワトソンに語る
- ヴィクター・トレヴォ 大学時代のホームズのただ一人の友人
- トレヴォ老人 ヴィクターの父。治安判事で地主
- ハドソン トレヴォ老人を訪ねてくる老水夫
- ベドウス ハンプシャーに住むトレヴォ老人の旧友
- プレンダーガスト 囚人船グロリア・スコット号の囚人
冒頭部(原文より)
「僕、ここに書類を持ってるんだがね……」 と、私の友人、シャーロック・ホームズは云った。それは冬のある夜のことで、私たちは火をかこんで腰かけていた。 「ワトソン君、これは君も一読しといていいものだろうと思うんだよ。そら例の『グロリア・スコット』の怪事件なんだが、それからこの手紙は、治安判事のトレヴォが、それを読んで、恐怖のため死んでしまった手紙なんだよ」 彼は抽斗から少しよごれた円筒形に巻いたものをとり出し、そのテイプをほどいて、灰色の半截の紙の上に、ぞんざいな字で書いてある、短い文句の書いてある紙を、私に手渡した。 ――ロンドンにおける、計画は、着々として、なされたり。主任、看視者、ハドソンは、蠅捕紙の命令の、すべてを、受くるべく、既に、予告せり、貴下の、雄鳥雉の、逃亡せる、ことを、信ぜられよ。 と、それには書いてあった。
「グロリア・スコット号」コナン・ドイル(青空文庫)
末尾部(原文より)
これがその晩私が、トレボウの息子に読んできかせた遺書であった。ワトソン、僕は考えるんだが、これは実際ドラマチックな事件だったよ。その善良な息子はその事件のために、心を破られ、世の中から隠棲して、お茶作りになり、今では相応にやり出していると云う話だ。またその水夫とベドウスとについては、その後全く何にもきかない。二人共完全にどこかへ姿をかくしてしまったものらしい。ベドウスはその恐喝を警察へ訴もしなかったと見える。またハドソンがどこかへかくれてしまったと云うことから、警察ではハドソンがベドウスを殺して、どこかへ逃げたものと想像している。けれども僕の考えで行くと、事実はそれらとは正反対だと思うのだ。たぶん、絶望におち入り既に密告されることを覚悟したベドウスは、かえってハドソンに復讐をし、出来得るだけの金を懐にして、この国からどこかへ逃げて行ったと僕は考えるんだよ。――君、事件の真相と云うのはこんなわけなんだ。もしこんな事件にも君の研究の役に立つなら、この事件に現われた人々も、さぞかし満足だろうと思うよ。
「グロリア・スコット号」コナン・ドイル(青空文庫)
原文を読む
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