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秘密の庭(チェスタトン)のあらすじ・登場人物

出口のない庭の首なし死体

  • ミステリ
  • 翻訳

チェスタトン 訳者 直木三十五 1930年(昭和5年)

文字数
18,532字
読了目安
約37分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

チェスタトンが1910年に発表し、『ブラウン神父の童心』(1911年)に収められたブラウン神父ものの短編(原題「The Secret Garden」)。パリ警視総監ヴァランタンの屋敷では、英国大使の一家や科学者、軍人、アメリカの富豪らを招いた晩餐会が開かれる。屋敷の庭は高い塀に囲まれ、玄関を通らなければ出入りできない。その庭の芝生で、招かれた覚えのない見知らぬ男の首を斬られた死体が見つかる。出入りのできない庭での事件という不可能犯罪の趣向に、恋の鞘当てや宗教と科学をめぐる対立が絡み、科学者シモン博士の挙げる五つの疑問が謎を整理する。客の一人として居合わせたブラウン神父が真相に迫る。直木三十五の訳で、1930年刊の平凡社『世界探偵小説全集』第九巻「ブラウン奇譚」に収められた。

あらすじ

パリ警視総監ヴァランタンの屋敷で晩餐会が開かれる。屋敷の庭は高い塀に囲まれ、出入りは執事イワンが番をする玄関からしかできない。客は英国大使ガロエイ卿の一家、シモン博士、ブラウン神父、娘マーガレットに想いを寄せるアイルランド出身の軍人オブリアン、そして諸宗教に巨額の寄付をする米国の富豪ブレインだった。食後、娘とオブリアンの仲を案じて屋敷をさまよったガロエイ卿は、庭の芝生で首を斬られた見知らぬ男の死体に行き当たる。死体は夜会服姿だが、客の誰でもない。オブリアンの軍刀は鞘だけが残され、マーガレットは求婚を断った直後でオブリアンは潔白だと証言する。ブラウン神父が富豪ブレインの姿がないことを指摘すると、ブレインは帽子も外套もなく消えており、血のついた軍刀が街道の藪で見つかる。翌朝、街道先の川で白髪の首がもう一つ見つかる。庭の死体はドイツの無頼漢アーノルド・ベッケルと判明するが、その双子の兄弟は前日ギロチンで処刑されたばかりだった。神父は、シモン博士が挙げた五つの疑問に答えて真相を示す。庭の死体はブレインの胴体に、処刑されたベッケルの首を据えたものだった。犯人は宗教に財を投じるブレインを憎んだヴァランタンで、処刑場から研究用と称して首を持ち帰り、庭で軍刀の技を見せると称して枝を切ってみせ、身をかがめたブレインの首を斬った。そしてブレインの首と軍刀を塀の外へ投げ、ベッケルの首を胴に添え、別人と思わせるために切り口を斬りつけたのである。一同が書斎に押しかけると、ヴァランタンは丸薬の小箱をそばに、椅子の中で冷たくなっていた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 巴里の警視総監であるアリステード・ヴァランタンは晩餐におくれた。そして来客達はもう彼より先きに来はじめていた。それで忠実な執事のイワンがお相手をしていた。イワンは顔に刀傷の痕のある、そして灰色の口髭と色別のつかないような顔色をした老人で、いつも玄関のテーブルに――そこには武器類がかかっている――に控えている。この家は主人のヴァランタンと同様に風変りで有名である。旧い家で、高い外塀と、セイヌ河の上に乗出しているヒョロ高いポプラの樹とを持っているがこの家の建築上の風変りな点は――そしておそらくはその警察的価値は――すなわち、この家には、イワンと武器とががん張ってる表の入口からするのでない以上は、はいっても出たというものがない事だ。庭は広くてよく手入れが行き届いていた。そして家の中からその庭への出口はたくさんあった。が庭から世の中への出口がないのだ。周囲は高くて滑々で登る事の出来ない塀にとりかこまれて、塀の上には盗難よけの釘が列をつくっている。この庭は、百人に近い犯罪家に首をつけ狙われている男にとっておそらく悪るい庭ではない。

「秘密の庭」チェスタトン(青空文庫)

末尾部(原文より)

 大探偵は机に向って、一同がはいって来るのも聞こえねげに、仕事に熱中しているかと見えた。一同はちょっと立留った。がその硬直したような上品な後姿を見ていた医者のシモン博士は何と思ったか突然前方に走りよった。ひと目見、ちょっと触ってみて、ヴァランタンの臂のそばに丸薬入りの小函があることを見た、人々はヴァランタンが椅子の中に冷たくなっている事を知った。

「秘密の庭」チェスタトン(青空文庫)

原文を読む

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